2005.07.15

盆つれづれ

東京はお盆(新暦)である。13日には迎え火をたいた。16日に送り火をたくまでは、仏壇飾りに仏様用の食事(小さな器にご飯・汁と三菜を盛ったもの)のほかに、(先祖の霊が)来る日はだんご、滞在中はそうめん、(あの世に)帰る日は塩むすびを供えるのだと祖母に教わった。その祖母も向こうの人となってしまい、現在はめでたく帰省中である(おかへり♪)。

祖母は確か、盆に帰ってくる先祖の魂のことを「おひょろさま」と呼んでいた。この言葉は、子どもには非常に怖かった。夜中のお雛様も怖いが、夜中に見る盆の祭壇も怖い。しかもそこにいるのは「おひょろさま」である。その言葉から、火の玉がひょろひょろと飛んでいる様子を頭に浮かべたものだ。だから夜中に目を覚ますことがないよう、盆は一生懸命目を閉じて眠った覚えがある。

「おひょろさま」のほかにもう1つ、「のんのさま」という言葉がある。祖母の言動からすると、それは(仏壇にいる)仏様のことらしい。盆に帰ってくるのは「おひょろさま」だが、普段、仏壇にいるのは「のんのさま(のんのさん)」で、よそから頂いた初物の果物などは、まずは「のんのさんにあげて」、しばらくして下げたものを家族で食べるのだ。

この「のんのさん」、子どものころは祖母のオリジナルだと思っていたのだが、もう何10年も前、テレビで放映された「のんのんばあとオレ」(水木しげる原作)を見たときに、「これは祖母の「のんのさん」と同じ言葉だ」と感じた。きちんと調べたわけではないが、元は同じ言葉だと思われる。いずれにしても「のんのさん」または「のんのさま」という言葉は、祖母の創作などではなく世の中に遍く存在する。

何でこんなことを書き連ねているのかというと、きょう外で『妖怪大戦争』(監督:三池崇史、プロデュースチーム「怪」(水木しげる、荒俣宏、京極夏彦、宮部みゆき)制作原案)のポスターを見たからである。

もちろん雑誌「怪」は知っているが、水木しげる先生や宮部さんや京極さんはさて置いて……いやあ、加藤保憲にスクリーンで再び相見える日が来ようとは! 嶋田久作から豊川悦司に交代したのがちょい残念だが、スチールを見るとなかなか似合っているので、それもまたよしだ。

何せ荒俣宏の小説は大好きで、『帝都物語』のころには夢中になって周囲に勧めまくった。単なる別世界のファンタジーではなく、現実とつながった異界の話で、実際に存在した歴史上の人物や出来事がフィクションの中にうまく織り込まれており、しかも学校教育が故意か時間の都合か知らぬが必ず避けて通る日本の近代という時代設定が気に入っていた。加藤と目方恵子の再会のダンスシーンなどには、本当にしびれた(→死語)ものだった。「帝都」ではないが、現在でも、過去に読んだ小説のうち好きなものを10冊を挙げろと言われたら、荒俣宏の『ゑびす殺し』(短編集)は絶対にその中に入る。

きょう見かけたポスターの加藤保憲の隣は、「目覚めよベイダー」のSWポスターだったのだが、この2人、どこか似通った匂いを放っていた。そういや、「帝都」のときの加藤も「目覚めよ(将門)」とか言ってなかったか?

2004.06.07

梅2題

NHKFMアジアポップスウインドを聞いている。

きょうは祐祐が風邪をこじらせ下痢と嘔吐で医者に運ばれた……というニュースぐらい(入院したわけでなく、自宅に帰り休養、回復に向かっているそう。彼はクリスチャンだが、昨日はそんなで日曜礼拝に行けなかったとのこと)。関係ないが(クリスチャンで思い出した)、楊祐寧の英文名はTony。范植偉の英文名はViter。張孝全がJoseph(ヨーゼフとは読まないワン)。金勤はKing(←本当か?)。馬志翔はMarkだが、呉懐中は資料なし(涙)。トゥオ先生や、沈孟生は英文名はないのか?

そんな余計な話はさておく。

日本列島も、いよいよきょう東北地方まで入梅で梅雨本番。

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2004.03.23

ニワトリはハダシだ

森崎監督の映画があったが、その話ではない。まさに花冷えのこのところの寒さで、思い出した祖母の言葉だ(→タイトル)。それは祖母が独身時代(大正時代?)、実家で祖母の父に怒られた言葉だという。――祖母が「寒い、寒い」と働くのをいやがっていると

「寒い」があるか? ニワトリはハダシだ、雁鴨(ガンカモ)は水の中にいる!

(寒い、寒いと言って怠けていてはいけない。人間が寒いなどというなら、ニワトリはどうだ? ハダシじゃないか。雁や鴨は冷たい水の中にいるんだ。それを思えば、寒さぐらい我慢しろ)

と、まあ怒られるというか、発破をかけられるらしい。

ここでもまた「我慢」である。昔の人の処世訓は、忍耐・我慢につきると言い切りたいぐらいだ。でも、ニワトリやカモのことを思い浮かべると、なんだか「我慢」のつらさも、ホンワリやわらいでくるのが面白いところ。ある意味、ユーモアを含んだ言葉でもあるんだろう。

とはいえ、鳥インフルエンザの流行る昨今、ニワトリでホンワリもしていられないか(恐喝するなよ)。……しかし、きょうは寒い。

2004.02.26

オン ニコニコ ハラタツマイゾヤ カンニンソワカ

真言宗の「真言」のような上記タイトルの言葉は、よく祖母に言われた教訓的呪文。要は、自分がいつもブーたれてた、ってことだ。仏頂面をしていると「いいかい? 人間ってのはね……」という出だしから始まって、このマントラに至るのだ。


おん にこにこ 腹立つまいぞや 堪忍そわか

(にこにこと笑顔で、腹を立てないこと、堪忍することが大切)


これを作ったのが誰かは知らないが、なかなか上手くできていると、いつも思っていた。「真言」というのは、意味がわからなくても、唱えること自体で力を発揮するものらしい。そういうパワーのにおいを借りてるところが、上手い。

特に「オン、ニコニコ」って出だしはそれっぽい。

でも「カンニンソワカ」は、今イチだな。

2004.02.01

銭とる苦患は死ぬ苦患

会社の仕事と、もう1つの別の仕事のどちらもが、うまくいかずにアップアップしていたら、ふとタイトルの言葉を思い出した。

2年前に亡くなった明治生まれの祖母が、仕事で落ち込んだ自分によく掛けてくれた言葉だ。別に、励ますような意味もないし、モチベーションを上げるとか、ポジティブになるというような言葉ではない。

「銭とるクゲンは死ぬクゲン」

(仕事をしてお金を稼ぐのは死ぬほど苦しいことだ。でも誰だって苦しいんだから、我慢して頑張りなさい)

ちゃんと調べたわけでも、説明を受けたわけでもないが、いつもそんなふうに受け止めていた。

お前は世界に1つだけの個別の存在なんだから、自信を持ってゆったりとやってみなさい……とか、そんなんじゃなくて、「苦労をするのが人間だ、人生だ」っていう人生観そのものが明治フレーバーで、それがいいかどうかは別として、ある意味フレッシュだ。

今や日本では、どこを掘ったって出てこない、思想の絶滅種に違いない。

漢字は、クゲンを辞書で引いてみたら、当てはまりそうなものが「苦患」しかなかったので、それを使ってみた。ちなみに意味は、(仏教で)地獄で受ける苦しみ(by三省堂新明解国語辞典第五版)とのこと。ま、苦しみのことだよな。

ほとんど祖母に育てられたと言っていい自分は、何かあると、祖母の言葉が呪文のように頭の中にぽっかりと浮かんでくる。メジャーなことわざ・故事成語は少なく、どこか微妙に、勘違いが入っているかもしれないし、方言が混ざっているかもしれない不思議な響きを持つ言葉が多い。

んなわけで、特にどうということもないが、単なる自分の懐かしみのためにカテゴリを作ってみた。名前は「ユキゴログ」。祖母の名前と「語録」と「ログ」を掛け合わせたもの。昔の人の生の言葉、まとめてみたら意外と面白いかも知れないなと……。

(ま、日々聞かされていた当時は、うっとおしかったですよ。で、韓国映画『おばあちゃんの家』なんか見ると、身につまされて、身につまされて……)

「同じ言葉、聞いたことがあるよ」という方がいらっしゃいましたら、よかったら反応していただけると嬉しいです……だから、どうなるわけでもないんだが。