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2009.09.14

息子

2008年NHKアジア・フィルム・フェスティバルで上映された『My Son ~あふれる想い~』(チャン・ジン監督/原題は韓国語の「息子」)をテレビで見た。強盗殺人により終身刑に服している男(チャ・スンウォン)が、帰休という制度により、たった1日だけ15年ぶりの帰宅を許される。3歳のときに別れたまま顔も知らない息子(リュ・ドックァン)と、老いた母のもとへ……。

入りやすい設定の話だが、チャン・ジン監督らしい仕掛けがそこここにある。その仕掛けには、観客からも随分と異論があったようだ。とはいえ、これこそまさにチャン・ジン式父子の物語。一筋縄ではいかない作家が、テレビで見た受刑者の帰休に関するドキュメンタリーをきっかけに、老いた自身の父や生まれ来る息子に対する想いを、自分のやり方で素直に作品にしてみたらこうなった、というところではないか。

最大の見どころは、やはり15年ぶりで「初めて」会った父と息子の距離が、時間を経るにつれ少しずつ縮まっていくところ。本当は気になって仕方がないのに、なかなか素直になれない2人が、ついに夜の街に走り出し心を開いていく様は、青春全開(←死語?)の初恋物のラブ・ストーリーを見ているようで、こちらが気恥ずかしくなるぐらいだ。

チャ・スンウォンは、狂気はあるがオトボケあり、人間味はあるが生活臭なし、といったギャップも楽しい、大好きな俳優の1人だが、息子を演じたリュ・ドックァンは、チャ・スンウォンのような濃いタイプとは対極の、パク・ヘイル系の楚々としたさわやか男子(撮影当時20歳)だ。クールな優等生的風貌に父への想いを宿したツンデレっぷりは、見事はまっていたと思う。『ヨコヅナ・マドンナ』では、体重を27kg増やして、韓国相撲のチャンピオンを目指す性同一性障害の高校生を演じた。20歳そこそことはいえ、子役から経験を積んできた演技派とのこと。本作は素直に演じたとインタビューで語っていた。新作は悪役だそうだが、これもまた器用にこなすのだろうなと推察する。

物語の種明かしのあと、周囲をも動かした父と息子との深い愛、そして、それ(血縁)とは別の「人と人との触れ合い」のかけがえのなさに感じ入る。

しかしそれでも、「なぜそうしたのか、そこまでしたのか」という思いが湧かないだろうか。 (作家の意図とは無関係に……というか、この作家にそんな観点はないだろうが)そのココロを、主人公の、友への友情を越えた感情にあったのではなかろうかと読みたくなるのは腐り過ぎか? 10月19日の夜中に再放映するので、眠らずに済めば、このあたり再確認してみたい(爆)。

『ヨコヅナ・マドンナ』をスポーツ物の少年ギャグ漫画とするなら、『My Son ~あふれる想い~』は一昔前の「新感覚」少女漫画といったところだろう。でもどちらにも、芸達者な俳優たちがいて、市井の人々の生活がうんざりするぐらいしっかり描かれていて、心に響く台詞がある。それらを土台として、オリジナルなものをつくろうという作り手の心意気が伝わってくるから、ただの漫画的映画として上滑りしないのだと思う。

Photo_08


『Orzボーイズ!』は見損ねてしまったので、こちらも10月14日にかけてみたいと思います。

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