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2009.09.28

昼間から呑む

Daytimedrinkingこのタイトルは自分の日記ではなく、23日に浅草(第2回したまちコメディ映画祭)で見た韓国映画の題名である。ことしのアジアフォーカス・福岡国際映画祭では『酒を呑むなら』というタイトルで上映されたが、したまちコメディ映画祭の方では『昼間から呑む』とされた。英題は《DAYTIME DRINKING》。韓国語の原題は「昼酒」という意味の言葉らしい。

映画祭サイトの作品解説にもあるように、ノ・ヨンソク監督はこれが初めての長編作品。100万円という超低予算で、自ら脚本、撮影、照明、編集、音楽までやってのけたという。

「失恋した若者のロードムービー」と聞くと、起伏の少ない自分探し的な物語を想像しがちだが、この映画は全く違う。コメディ映画祭で上映されるだけあり、むしろ「失恋したトンマな若者の、たまたまロードムービーwith酒」といったところだ。

とはいえ、こんな素敵なタイトルをつけながら、この映画は酒がうまそうではない。ほとんどの場面で飲み食いしているが、酒がうまそうに見えない。この映画で実にうまそうに酒を呑んでいるのは、主人公が結果的に2万ウォンを「騙し取る」ことになるゲイの労働者ぐらいなものではないか。大体、主人公自身が「酒を呑む」ということにこだわりを持っておらず(だが酒は強い)、酒のみならず、自分の行動にも大したこだわりも意志もない、素直で世間知らずの若者だ。

主人公の旅きっかけを語れば、その主人公の「ボケ」っぷりがわかってもらえるだろうか。

映画の最初のシーンは、若者たちの飲み会場面から始まる。主人公の失恋を慰めようと、皆で明日旅行に行こうという話で盛り上がる。当の本人は乗り気でなかったがその場の勢いに丸め込まれ、翌朝、現地のバスターミナルに1人降り立つ。ところが、友人たちは誰1人やってこない。「言い出しっぺ」の友人に電話をすると、来られないという。が、友人に説得され、後から友人も合流するということで、現地で友人の先輩がやっているペンションに泊まりにいくことにする。

あとは失敗続きの大ボケ話になる。とはいえ、だらだらしたなりゆきまかせの物語になるわけではなく、登場人物から台詞までしっかり練り上げられて愛すべき「くだらない」物語が形づくられ、「くだらない」オチに至るまで貫かれていくのが素晴らしい。

左上に貼った画像(韓国でのポスター?)を見ていただくとその片鱗がうかがえると思うが、映像も、そして音楽も、さりげなく心地よく美しい。特に美しい景色の中で撮影されているわけではないのだが、場面場面が、堂々たる映画の「絵」になっている。そしてそこに見事なプロットのくだらない物語が横たわり、その上を「イマドキの若者」が泳ぐ。

そのギャップが放つパワーは、山下敦弘監督作品以上のものがあるかもしれない。

2009.09.14

息子

2008年NHKアジア・フィルム・フェスティバルで上映された『My Son ~あふれる想い~』(チャン・ジン監督/原題は韓国語の「息子」)をテレビで見た。強盗殺人により終身刑に服している男(チャ・スンウォン)が、帰休という制度により、たった1日だけ15年ぶりの帰宅を許される。3歳のときに別れたまま顔も知らない息子(リュ・ドックァン)と、老いた母のもとへ……。

入りやすい設定の話だが、チャン・ジン監督らしい仕掛けがそこここにある。その仕掛けには、観客からも随分と異論があったようだ。とはいえ、これこそまさにチャン・ジン式父子の物語。一筋縄ではいかない作家が、テレビで見た受刑者の帰休に関するドキュメンタリーをきっかけに、老いた自身の父や生まれ来る息子に対する想いを、自分のやり方で素直に作品にしてみたらこうなった、というところではないか。

最大の見どころは、やはり15年ぶりで「初めて」会った父と息子の距離が、時間を経るにつれ少しずつ縮まっていくところ。本当は気になって仕方がないのに、なかなか素直になれない2人が、ついに夜の街に走り出し心を開いていく様は、青春全開(←死語?)の初恋物のラブ・ストーリーを見ているようで、こちらが気恥ずかしくなるぐらいだ。

チャ・スンウォンは、狂気はあるがオトボケあり、人間味はあるが生活臭なし、といったギャップも楽しい、大好きな俳優の1人だが、息子を演じたリュ・ドックァンは、チャ・スンウォンのような濃いタイプとは対極の、パク・ヘイル系の楚々としたさわやか男子(撮影当時20歳)だ。クールな優等生的風貌に父への想いを宿したツンデレっぷりは、見事はまっていたと思う。『ヨコヅナ・マドンナ』では、体重を27kg増やして、韓国相撲のチャンピオンを目指す性同一性障害の高校生を演じた。20歳そこそことはいえ、子役から経験を積んできた演技派とのこと。本作は素直に演じたとインタビューで語っていた。新作は悪役だそうだが、これもまた器用にこなすのだろうなと推察する。

物語の種明かしのあと、周囲をも動かした父と息子との深い愛、そして、それ(血縁)とは別の「人と人との触れ合い」のかけがえのなさに感じ入る。

しかしそれでも、「なぜそうしたのか、そこまでしたのか」という思いが湧かないだろうか。 (作家の意図とは無関係に……というか、この作家にそんな観点はないだろうが)そのココロを、主人公の、友への友情を越えた感情にあったのではなかろうかと読みたくなるのは腐り過ぎか? 10月19日の夜中に再放映するので、眠らずに済めば、このあたり再確認してみたい(爆)。

『ヨコヅナ・マドンナ』をスポーツ物の少年ギャグ漫画とするなら、『My Son ~あふれる想い~』は一昔前の「新感覚」少女漫画といったところだろう。でもどちらにも、芸達者な俳優たちがいて、市井の人々の生活がうんざりするぐらいしっかり描かれていて、心に響く台詞がある。それらを土台として、オリジナルなものをつくろうという作り手の心意気が伝わってくるから、ただの漫画的映画として上滑りしないのだと思う。

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『Orzボーイズ!』は見損ねてしまったので、こちらも10月14日にかけてみたいと思います。

2009.09.05

PRINCE OF TEARS のみなさん

《PRINCE OF TEARS(涙王子)》は、第66回ベネチア国際映画祭で9月4日に上映された。

1段目右端は聯合網(画像はAFP提供)記事より。
2段目は公式サイトより。(←Vサインはやめれ)
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映画の公式サイトによれば香港は10月22日、台湾が10月30日封切。公式ブログには、ベネチア入りの報告写真が楽しそうに載っかっている→威尼斯日記(海で遊ぶ気満々そうな風情の張孝全)。BBCニュースのレポートは、おそらく4日の映画祭での監督の弁をまとめたものだろうと思われる。張孝全が演じた役柄の男性の娘さん2人(少女2人の姿はトレイラーでも見られる)が実在していて、そもそも彼女たちの(父親への)想いこそが、台湾(あるいは対岸も含む?)において今も制作発表すら難しい政治的背景を持つ時代を描いた作品をつくり上げるための原動力、といったところか。


ニエズ話題のおまけ。
昨年NHKアジアフィルムフェスティバルで上映された、2008年台湾の大ヒット映画『Orz ボーイズ!』が、NHK BSで放映予定。阿鳳の馬志翔が出演している。ほかの放映作では、一昨年の映画祭で『京義線』を見たが、なかなか印象深くおもしろい。昨年見逃したチャン・ジン作品(『My Son ~あふれる想い~』)も是非見たい。

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