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2009.05.25

やはり寝てはいけないらしい

23日、盧武鉉前大統領の死の第一報をラジオで聞いたとき、まだ「山に登り崖から落ちた」とのみ報じられていて、自殺なのか事故なのか断定されていなかったが、そのときふと黒澤明監督の『悪い奴ほどよく眠る』の火口への投身自殺(未遂)場面の情景が浮かんだ。あとから写真を見ると、その場所は映画とは全く違う、東尋坊のように切り立った崖だったけれど……。盧武鉉のことは通り一遍のことしか知らないけれど、農家の三男で人権派の弁護士として活躍し政界入りなどという経歴を読むと、故郷の山の崖から身を投げたというのが何とも哀れだ。

フレディマックCFO代行、ディヴィッド・ケラーマンの4月の訃報には感慨はなかったけれど、自殺ではなく謀殺なのではないかと思ったのを覚えている。

「悪い奴ほどよく眠る」とは、『ダウト~あるカトリック学校で』の原作戯曲の冒頭に掲げられていた言葉でもある。もちろん、映画の監督で戯曲の作者でもあるジョン・パトリック・シャンリィは黒澤映画を知っていて、映画を意図して書いた言葉だ。これが実質的にどこにつながっていくかというと、最後の場のジェームスとアロイシスとの「最近、眠れない」「我々は、あまりよく眠ってはいけないということなのかもしれない」という会話となる。

世の中の流れは速く、重大なことも卑小なことも、自分の頭で考えたという自覚もないまま、「どこかのだれか」によって決められていく。夜中にインターネットで他人の書いた文章を読んでは、愕然としたり、憤慨したり、自分に情けなくなったりして眠れなくなる。

テレビドラマ。相変わらず『デスパレートな妻たち』は見ている。とはいえ先週も先々週も見逃した。特にギャビーのエヴァ・ロンゴリア・パーカーやイーディのニコレット・シェリダンあたりの濃いキャラクターが好きだ。女優たちの日本語吹き替えが全員個性的で面白い。テレビドラマをDVDで一気に見るというのは楽しいが、放映ごとに見ると自分の頭の中に、より強烈にその「世界」ができてそれが持続する。……一気に見るにしても、放映ごとに見るにしても、テレビドラマというのは映画に比べると麻薬的な部分が大きいと思う。

海外ドラマブームってのは、みんな実は、現実逃避したいんじゃないか、物を考えたくないんじゃないかとずっと思ってきた。そうやって、我々一般大衆が口を開けてテレビドラマの顛末に夢中になっている間に、政治は腐り、経済は崩壊し、地球は汚れ、家族が離れ、隣人は殺され、誰かがほくそえんでいるかもしれない。チョムスキー言うところのスポーツ観戦同様に、それは、世の中を思うように動かしたい層にとって大変好都合なことなんじゃないかと……。

最近映画館で見た映画。『チェイサー』(←見たら必ずどーんと落ち込む必見の佳作)。『その土曜日、7時58分』(←見たら必ずどーんと落ち込む必見の佳作)。はやく『沈黙を破る』に行かなければ。

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コメント

こちらこそごぶさたです!

『ステート・ウイズイン~テロリストの幻影~』の、姉妹作というのか何と言うのか知りませんが、NHKBSでもあの前に放映された『ステート・オブ・プレイ~陰謀の構図~』がラッセル・クロウ主演で映画化されて、『消されたヘッドライン』というタイトルで日本でただいま公開中です。いろいろなレビューを読むと、出来はイマイチのようですが……。
(ウイズインの方が映画化される話はとんと聞きません)

一番見たいのは、『ドクター・フー』新シリーズの映画化ですけれどもね(←しつこい)。

テナントの出世作でもあり、ラッセル・T・デイビスが脚本を書いた英テレビのミニシリーズドラマ版のカサノバ(ヒース・レジャーの映画『カサノバ』と同じ2005年作品)は、昨年の12月にDVDを購入したのですが、大変面白く、またドクター同様にテナントの魅力爆発のドラマでもあります。悲しいかな、字幕がないのに買ってから気付きました。音楽、プロデューサーも『ドクター・フー』と同じメンバーだったりします。

今年ゴールデン・グローブ賞にノミネートされていたHBOのドラマ、《Recount》とか《In treatment》とか《Jhon Adams》なんかも見てみたいものですが、向こうのDVDしかないんですよね。

たいへんごぶさたしています。
海外ドラマってのは、毎週欠かさず見てないと何か物足りない気に……なるほど麻薬のようです。私の周辺でも海外ドラマが人気です。DVDレンタルの店だけは田舎にもあるので、気軽に借りて見られるというのも海外ドラマヒットの大きな理由だと思ってます。こちらは、地方「都市」という位置づけだというのに、年明けに地元の映画館が店じまいし、来年早々にはただひとつ残っていたデパートも閉店が決まりました。あらゆるものの選択肢がどんどん減っていく中で、海外ドラマの存在がますます光り輝いて見えてしまうのはしかたないことなのかなあ、と感じているところです。

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