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2006.11.27

意外と明るい

土日とフィルメックスで5本映画を見る。土日とも、見る予定だった午前中の回は寝坊して行けず(←やっぱり)。というわけで『ワイルド・サイド……』と『斬る』は見損ねました。

観客賞を受賞した文句なしの佳作『オフサイド』。登場する女の子たちが非常に身近に感じられると思ったら、そりゃ彼女たちが「サッカーおたく」であるからだった。おたくにとって、興味の対象はすべてに優先する。そうだ、行け行け! ……って、そういう映画ではない?(笑) ま、実際にはサッカーおたくも、実際の選手も、カレシがサッカー・ファンだった女の子もいるのだけれど、彼女たちがそれぞれに様々な方法で、ワールドカップ予選の最終戦の開催される競技場へ入ろうとして「女性だから」という理由で捕まって、会場外で場内の歓声だけを聞かされつつ、軍(革命防衛隊?)の兵士の監視下で拘束されることになる。面と向かって「どうして女性は会場に入れないのか」と問われれば、軍の兄ちゃん本人にだって納得できる答えなどあるはずはないために、力を振りかざしながらも今ひとつ弱腰な兵士たちと、へたすりゃ革命裁判所行きかという危機一髪な状況下にありながらも、あっぱれなサッカーファンぶりを見せつける女の子たちとのやりとりが楽しい(←楽しくていいのか?)。で、痛快だけれども、とっても心配だ、結末のその後が……。

『黒眼圏』。陳湘淇(チェン・シャンチー)は屋根裏&大型ネズミで大変だったみたいだけれど(@Q&Aによる)、映画的には台北ではなくクアラルンプールであることで、何だか知らないが、すこんと頭上が抜けたような開放感が味わえた気がする。傑作と言われる『楽日』より、自分は好きかもしれない。雨水が池のように貯まったビルの廃墟が登場するのだが、その水の風景が素晴らしい。蛾(自然科学の知識がないので、見ている最中「蝶」だと信じていたが、「蛾」だとQ&Aでは話されていた)が舞うシーン、そして何よりもラストシーン。意識不明の男の眠るカットのあとに、水面が映る。もうこのあたりで終わりだろうなと思っているところで、スクリーン一面の水面の上部から、少しずつ「何か」がやってくる。その「何か」が完全に見えたときに、えも言われぬ安心感というか、幸せな気持ちが心の中を満たしてくれる。この作品も、モーツァルト生誕250年の記念で制作されたもので、映画の中には様々な歌が使用されるけれど、特に意識不明の男を世話する家族たちの場面でかかる、古い中国語の歌謡曲?(←すみません、知識なしで)が良い。映画の中で印象的に表現される「水」や「煙」や「蝶」(←「蛾」だってば)のイメージが、漢詩のモチーフであるせいもあるのか、作中で使用される歌と心地よいハーモニーを奏でているようだ。

アビチャッポン・ウィーラセタクン作品、『世紀の光』。これもとっても面白かった。シンドローム・シリーズ第3弾にして、最終作とのこと(@公式カタログによる)。モーツァルト生誕250年記念作品としての見どころは、歯医者の歌うボサノバ風のささやくような歌と、その後のギター曲だろうか? 実は『ブリスフリー・ユアーズ』を何度も見逃しているので、どうも何とも言えないのだが、『トロピカル・マラディ』の漆黒の緊張感から一転、とてもユーモラスで明るい話になっている。自分を掘り下げると暗くなり(『トロピカル・マラディ』)、外に目をやれば(『世紀の光』は両親(監督の両親は医師)へのオマージュ)ほどほどな距離感を保てるというのは、誰にしても同じなのだろうか。Q&Aで、カメラ目線の年配の女医の件が話されていて、監督自身は、シーンそのものはその場の感覚で採用したということを言っていたが、タイトルロールでは「台詞」からはみ出たらしき会話なども聞かれたような気がしたし、「物事の二重性」の表現という監督のテーマは、そのために1本の映画の中に視点を変えた2つの話を用意しただけではなく、その2つの話(フィクション)の裏側(ノンフィクション)までを、とらえて見せようとしているように思えた。


で、張睿家クン(@『永遠の夏』)、金馬奨最佳新演員、おめでとう(←でも別に好きなわけではない)。→結果。全くの余談ですが、『マキシモは花ざかり』長男を見ていて、次はぜひ張孝全クンにも、あんなチンピラ系の役をやってほしいものだと……。(え、イメージそのまんまじゃないかって?(笑))

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コメント

ぐりさん、コメントをありがとうございました。すっかり「自分とこ」に「ごぶさた」してしまいました。

私がこの映画を気に入った理由は、上でも書きましたが、やはり何と言ってもラストシーンでした。とはいえ、蝶(蛾)の動きが脳裏から消えないのが不思議です。

で、一番気になったのが、会場に貼ってあったこの映画のポスターです(台湾版?)。持ち帰りたいぐらいでした。

こんにちは。
私も『黒眼圏』すごく好きです。今までに観た蔡明亮作品のなかでもとくに好きかもしれない。

「蛾」と「蝶」ですが、実は生物学上でははっきり違いを定義されてるわけではないらしく、単に感覚でいいわけてるだけらしいので、正確にいえば「どっちだっていいい」ってことになるようです。
一般には羽根を広げて止まる=蛾、閉じて止まる=蝶、夜行性=蛾、昼行性=蝶、ととらえられてますが、羽根を広げて止まる蝶もいるし昼行性の蛾もいるし、曖昧なものです。
私は柄からみて「蛾」だと思ったんですけど・・・それにしてもあのシーンはへなへなと頼りなく水面を蛾/蝶が舞う芝居がすばらしかった。

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