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2006.11.22

重量級

会社を休んで『大菩薩峠』と『日本のいちばん長い日』を見てきた。主役から脇役に至るまで生きていて、映画の隅から隅まで本当に面白かった。昔の日本映画を見ると、いつもその豪華なキャストに驚くが(というか、今となれば当時の俳優はみな名優なのだから「豪華」に感じるのは当たり前なのだが)、特に『日本のいちばん長い日』などは、戦後生まれの人間には昭和史の授業のような内容(とはいえ授業では教えない部分)なのにもかかわらず、また息をもつかせぬ緊張の刻一刻を綴っている話であるのだけれども、そこに登場する軍部や閣僚、宮中の面々が年配者の役から若者の役に至るまで全ておなじみの、(鬼籍にある人も含め今ではみな)凄い人たちばかりなので、内容のヘビーさの一方で、オールスターキャストの中華圏のめでたい旧正月映画を見ているような感覚を覚えることがあった。監督の作品にいつも出演している俳優が、当然この2本の映画でも顔を見せてくれるのが、何だか微笑ましい(小川安三、好きです)。『大菩薩峠』は、雷蔵版も見ていないし、内田吐夢作品も見ていないので何も言えないが、主演の仲代達矢の現代的な個性は、主役が悪役であるこの奇妙な時代劇にはとても合っていると思う。舞台は余り見ないのでわからないが、テレビなどと比べると、俳優の存在感が格段にすばらしく感じられるのはスクリーンだ。新珠三千代の単なる綺麗さに留まらない妖気を帯びた美しさも、映画ならではだろう。こんなに魅力的な女優さんなのかと、改めて驚愕した。大河物語風に展開して行きながら、長い長い狂乱の大立ち回りでばっさりと終幕するいびつな終わり方は、どこか既存のカテゴリーにとても類別することなど不可能と言われる、中里介山が30年書き続けた大長編小説へのアプローチとして面白いと思う。小説の主題を観客の心に印象付けることにも成功している。

フィルメックスのパンフレットでトニー・レインズが書いている岡本喜八に関する文章を読むと、制作者側が要求する作品も撮れるし、自分のオリジナル脚本で撮りたいものも撮る職人監督という意味では、ジョニー・トーみたいなタイプなんだなと感じた。となると、オリジナル脚本の作品を見ないと片手落ちというものだろう。

そんなことより、いつかは中里介山の原作小説『大菩薩峠』をケツまで読むのだという思いが、じわじわ膨らんできていたりして……(プルースト読むよりは楽しいか?)。

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2006/12/08(金) 原作は大宅壮一。 残念ながら未読です。 東宝創立35周年記念作品ということで、 相当力が入ってます。 オールスターキャスト。 豪華です。 仲代達矢(ナレーションのみ)、 笠智衆、天本英世、加山雄三他多数出演。 昭和20年8月、日本はポツダム宣言の受諾を決定。 しかし陸軍は徹底抗戦を叫びます。 青年将校らは、 8月15日正... [続きを読む]

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