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2006.10.22

地味目の始まり。

夜から六本木へ。TOHOシネマズのトイレは、盛装(正装、じゃないよね?)のきらびやかな老若女々でいっぱい。だが、見たのは『クブラドール』と『Love Story』という、アジアの風部門でもかなり地味目な作品。

垂れ流しで感想を書いてみます。

フィリピン映画『クブラドール』は、ティーチインでの脚本家の弁では、ドキュメンタリードラマとして書いた作品なのだという。フィリピンの貧民街で夫と暮らす、クブラドール(フエテンという違法な賭けの賭け金を集めて歩く集金人のことらしい)の女性(息子を亡くし、娘には子供(つまり孫)もいる元横綱・曙のような風貌の年配の女性)の日々を、ドキュメンタリー風に描いた作品で、フィリピンの低所得者層の厳しい現実を映しながらも、その中で生きる人間の強さ、美しさを表現しようとしたものだという。ティーチインで語られていたが、やはりフィリピンでも商業映画が主流で、このようなテーマ性のある作品を商業ベースに持っていくことは難しいのだそう。先週フィリピン国内で封切られたが、確か上映は1週間で終わってしまったとの話があった。しかし、この作品の見事さについて言うなら、主演のジーナ・パレーニョの素晴らしさはもちろんのこと、理不尽な現実に翻弄される人間たちの日々という内容とはうらはらに、映像的には充分見ているだけで「楽しめる」仕上がりであるという点は大きいと思う。メインストリームの映画とはもちろん違うけれども、決して重いだけのドキュメンタリー風社会派映画でも、独りよがりのアート映画でもない。

ティーチインで複数の観客がほめていたが、ヒロインが日々集金して歩き回るフィリピンのスラム街の路地裏の風景がとても魅力的で、まるで『きらめきの季節~美麗時光』の少年たちの暮らす川べりの街のように美しかった。冒頭の「フエテン」のガサいれで警官が男を追い回す屋根上のシーンなどは、何だか『欲望の翼』が思い出された。カメラがごく近く、賭け金を集めるヒロインを追っていく。チェーンスモーカーの彼女は、肺の具合が悪いらしく、動きながら、常に苦しそうな息づかいをたてている。太めの体格のせいで喉が渇くのか、たばこの吸い過ぎのせいなのか、もしかしたら別の病気なのか、街角で立ち止まってはミネラルウォーターを買って猛烈な勢いで飲む。水を飲むと、すぐにまた、たばこに火を点ける。「おばさん」の日常を丹念に追っているだけなのに、彼女が雨の日にビニールコートを着込む様子や、履いている粗末なサンダルで何かを踏んづけてしまい底面から汚れを取ろうとしている様子など、ごくごく些細な動作が、彼女そのものを良く表していて、見ているだけで面白い。敬虔なキリスト教徒でもあり、亡くした息子のことが忘れられない母でもあり、近所で人が亡くなれば埋葬費用を募金して歩く良き隣人でもある。幸運も不運も訪れるが、総じて、彼女に訪れるのは圧倒的に不運の方。その彼女の不運の原因がフィリピンという国の体制にあることを軽く糾弾しつつも、描かれるのは、不運の中でたくましく生きている人間である。人生経験に裏打ちされた、ヒロインのキャラクターの深みが、魅力的な映像とともに、とても強い印象を残す映画。面白い作品なので、ぜひ機会があったら見てください。


どうして見ようと思ったのか、覚えていない『Love Story』。これは香港映画なのか、シンガポール映画なのか。とりあえず、メインは簡体字を使う中国語(マンダリン)を話す人たちの物語。恋愛小説がそこそこ売れている若い男性作家の、彼をめぐる女性たち(現実の恋人でもあり、作家の小説中の恋人でもある)についての告白という形をとっている。途中まで、これはもしかしたらメタ・ラブストーリー、あるいはメタ・メタ・ラブストーリーなのかと非常に新鮮な感触で見ていたが、結果的には孟京輝的で、しかも結局「恋愛」から抜け出せず、映画そのものが「恋愛」にとらわれてしまう結末には、ちょっとがっかりだった。表現はとても緊張感があって、特に中盤までは面白かった。母から禁書を遺言された女の子の話は良いと思う。いっそ「禁書」を最終テーマにしちゃった方が面白かったんじゃないだろうか。見どころは、セクシー婦警さん(←こういう言葉、使っても良いのか?)と、相手が誰であれ常に「受け」な主人公の作家。そんなあたりと、B級に足をかけているところは、軽く李志超風味……?(笑)。イ・ビョンホン似の、カントニーズ・スピーカーの編集者のお兄ちゃんが少し気になる。

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