« 額面以上 | トップページ | 地味目の始まり。 »

2006.10.10

近況的3

『星々の生まれるところ』を土曜日(7日)にやっと入手。エルロイ(『獣どもの街』)と『エドワード・サイード OUT OF PLACE』と『みうらじゅんの映画批評大全』の四つ巴状態なので、どれが最初にゴールに到達するやら。(大部からやっつけたいものですが……)

最近もっとも印象的だったのは、仕事から帰って食後に見た深夜のテレビでの、吉田喜重監督の『鏡の女たち』。映画館で予告編は見ていたのだけれど、見ないまま終わってしまった作品。これは、好き嫌いは別として本当に凄い迫力の映画で、淡々と発される芝居がかった台詞と、ゆったりしたストーリー運びにもかかわらず、テレビの前で正座したまま成り行きに釘付けになった。失踪癖のある記憶喪失の女(尾上正子:田中好子)と、その母かもしれない女(川瀬愛:岡田茉莉子)、記憶喪失の女の娘かもしれない女(川瀬夏来:一色紗英)。彼女らが血の繋がった母・娘・孫娘なのか、という謎解きを中心としたサスペンスの基本構造の上に、母と娘、女の業といったものを描き出した映画で、そこに、家族の封印された過去としての、被爆地広島での出来事が深い影を落とす。内容的にももちろんだが、映像そのもののインパクトも、映画ならではのものだった。

で、連休は、『エドワード・サイード OUT OF PLACE』(7日、アテネ・フランセ文化センター)と『六ヶ所村ラプソティー』(ポレポレ東中野)&『キスキス、バンバン -LA的殺人事件』(浅草中映)を見た。

『OUT OF PLACE』は、このところ見るのを最も楽しみにしていた映画の1本なのだが、その「サイードの記憶」の部分よりもむしろ、パレスチナ難民キャンプの中の映像や、イスラエルに暮らすユダヤ系やアラブ系など様々な立場の人々の様子などの方が、ずっと興味深かった。「サイードの映画」であることを忘れてしまうぐらいに……(佐藤監督が上映会場で話されていたように、それはある程度、意図されたものでもあった)。9・11以降の「今」を考える中で生まれてきた作品の1つだそうだが、それでも、映画を見てさえも、自分のような日本人にとっては、まだどこか「遠い」感じも受けた。それは、サイードの(パレスチナ問題に対する)危機感・使命感よりも、哲学的な部分の方に「視点」としての重きが置かれていたからかもしれない。この11月にはまた、ポレポレ東中野でも上映予定。六ヶ所村の核燃料再処理工場を取り上げた『六ヶ所村ラプソディー』もまた、イスラエルとパレスチナのように、異なる立場の人々のそれぞれの生活、それぞれの言い分、それぞれの人生をとらえたドキュメンタリー。でも、イスラエルとパレスチナよりも、より利害が見えやすいので生臭い(しかし、六ヶ所村の人々だけでなく、その近隣の人々、原子力の問題に関わってきた学者、映画監督といった様々な立場の人々の、今はもちろん過去にまでさかのぼって取材した労作)。観客自身も、電力については、消費するだけの立場であるという「後ろめたい」思いがあるだけに、映画によって突きつけらるものは大きい。イギリスとアイルランドの間にあるマン島の漁師(彼らの漁場はイギリスの核燃料再処理工場の排水によって影響を受けている)が、「日本は世界一の漁貝の消費国なんだから、汚染される前に、あらゆる種類の魚介類(の現在の汚染度)を調査しておかなければだめだ」という意味の、映画中もっとも建設的な話をしていたのが印象的だ。ダム建設や、有明湾、有事関連法……etc、ずるずるずるっといつのまにか進行していく無力感が味わえる。そんなつもりでつくられたものではないことはわかっているけれど……。(そして憲法も改正されてしまうのか) 『キスキス、バンバン -LA的殺人事件』は、打って変わって、びっくりしたけれどコメディだった。本筋よりも、台詞や軽い雰囲気を楽しむ、意外とおしゃれ目な映画だ。そして、おしゃれじゃないのは、ヴァル・キルマーだけだ(笑)。

最後に、『変態村』DVD。特典の、短編『ワンダフル・ラヴ』の素晴らしさとメイキング映像(&制作に関する監督インタビュー)があまりにも素晴らしいので、北欧発売版にあった監督コメンタリーがなくても満足、というような気分になってきた。『A WONDERFUL LOVE』と『変態村』に関しては、基本的には「監禁物」で、愛というものが個人的な妄想・妄執に過ぎないことと、そんな人間の異常さ(←でも「異常な人間」として描いているわけではない)、悲しさ、愛しさを描いているところなど、ほとんど同じ。登場人物や背景は全く違うけれど、このあたりのテーマには弱い(←好きという意味)ので、このDVDは非常に嬉しい1枚である。それにしても、ヴェルツ監督の頭の形、誰かに似てるんですけれども……(誰なのか、思い出せずに苦しい)。

読みにくい文ですみません。

« 額面以上 | トップページ | 地味目の始まり。 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/9120/12169128

この記事へのトラックバック一覧です: 近況的3:

» 劇場公開スタート [『六ヶ所村ラプソディー』~オフィシャルブログ]
ついに劇場公開が始まりました。初日はどきどきしながらポレポレへ出かけてみると、ほぼ満席。ほっとしました。初日から3日間休日が続いたので好調な出足となりました。特別鑑賞券を売って頂いた皆様、みにきてくださった皆様に感謝いたします。今日はこれから4日目の上映がスタ... [続きを読む]

« 額面以上 | トップページ | 地味目の始まり。 »