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2006.10.29

感想だっていいじゃないか

きょうは京橋でオーストラリア映画を見る予定。別に、『2:37』でオーストラリア映画づいた、というわけではない(笑)。

映画祭や特集上映での、ゲストとの質疑応答を何度も見てきた。特にこのごろ思うのは、日本に限らず世界中のどこでも、まだ公開されていなかったり、公開されていても小規模で終わってしまっていたりする作品や、未評価の作品で、特に意欲的につくられた映画の監督さんや、プロデューサーの方が質疑応答に登場した場合、どんなに本質的でなかったり、的を外しているように思われる質問であっても、答える方は、必ずや自分の土俵に持っていき、自分の言いたいことを得々と語ってくれる。こだわりを持っている作り手であればあればあるほど、質問などどうあれ、聞いていて面白い話を聞かせてくれるし、その作品を理解する手がかりや、世界を考えるヒントを幾つも出してくれる。

もちろん「良い質問」なら、さらなる化学反応によって、もっと面白い話が聞けるかもしれない。

作品ですべてを語りつくしているから、何も言葉で説明するなどない、という作り手もいるだろう。そんな場合は、素人も混じる映画祭の質疑応答など、どんなに良い質問が出てきたって歯が立つわけはない。よほどの名インタビュアーでも連れてこなければ、面白い話など引き出せないだろう。

でも作り手の多くは、作品にこだわりを持っているし、「作品」として抽出したものの裏に、何十倍・何百倍もの思念が隠されているはずだ。俳優がゲストに出てくる場合は話は違うが、監督やプロデューサー、脚本家などのスタッフ側の人々が登場した場合、質問の質などに関係なく、作り手は語るべきことを語ろうとするだろうし、実際、質疑応答を聞いていると、脱力するようなしょうもない質問であっても、応答の側からは、質問に対する答えとは全く違った方向で、思わず耳を傾ける話が聞かれることも多い。本当に多い。

そして、そういう作り手であればあるほど、「感想でも良いですから、ぜひ皆さんの声を聞かせてほしい」と、質疑応答の前に言ってくれたりする。質問もせずに傍で聞いている場合には、他人の感想など聞きたいとは思わないが、「長々とした感想&平凡な質問が最後にちょっぴり」な「質疑」であっても、作り手からは良い話が聞けたりする。自分はよく質問はするほうではないが、「感想だか質問だか、わけのわからない長々とした質問」というのをやってしまったことがある。不慣れな上に、緊張で考えをうまく言葉にまとめられず、無様なことになった。多分、その「くだらない長い話」が呆れられたせいに違いないが、通訳さんに、(本人はしっかり述べたつもりの)「質問」の方を見事にすっとばされ、司会者にも揶揄されてしまったという苦い経験がある。これはかなり悲しかった。基本的には、質問をするよりも、他人からの質問とゲスト側の答えを聞きながら、静かに自分の中で内容について考えたいと思う方なので、よほどの理由がない限り質問はしないのだが……。

今回の東京国際映画祭で見た『セランビ』や『フォーギヴネス』や『2:37』のティーチ・インでは、監督やプロデューサーの作品にかける思いが非常に良く伝わってきて、とても参考になったし、その場にいられる幸せ(直接作り手の声を聞くことのできる幸運)を有難く思った。『フォーギヴネス』の海外のプレスからの質問にしたって、本質的ではあったが概念的な質問で、決して「上手い」性質のものではない。それでも監督は、深い話を語りつづけた。常識外のものは別として、質疑応答での実りは、質問の質(質問者の側)に左右されるものではないのだなと、心から感じた。

もちろん、過去の『蝴蝶 羽化する官能』(蝴蝶)や『楽日』(さらば、龍門客棧)や『プロスティ』のときみたいな、映画祭での作品鑑賞態度として信じられない狭量な倫理観や、映画への固定観念に満ち満ちた、同じ国民として恥ずかしくなるような耐え難い質問も、あることはある。それは論外だ。

進行時間の問題も大きいのだろうから、それはわかる。でもまあ、それはそれとして、「くだらない質問」だって「長い感想」だって、質疑応答の本来の目的をそぐようなものでは決してないのだと思う。

(業界による業界のためのイベントであると言われる映画祭の場合は違うのかも知れませんが……)

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