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2006.08.15

赤像式ふくろう

Fukurou
2週間前に出かけて、余りの混雑に入場する気になれず、『ゲルマニウムの夜』でお茶を濁した「ルーヴル美術館展~古代ギリシア芸術・神々の遺産」。今回も大混雑だったが、もう公開日が残り少ないので覚悟を決めて芸大美術館まで行ってきた。ルーヴルなどという大メジャー美術館の名を冠した展覧会など、行くものではないことはよ~くわかっているのだが、最も有名なあの大王の像を、初めて間近かに見るチャンスを逃すわけにはいかないということで、とても芸術と対峙するような環境ではない夏休みの大混雑の館内を、とはいえ芸術がわかるのかお前に……と言われてしまえば返す言葉もないけれど、とにかく耳を塞ぎ目を瞑りながら、歩いてきた。

幸いなことに、芸大美術館であるのでさほど大規模ではなく、思ったほど疲れず飽きず、なかなか楽しく見られたのだった。しかもバリバリのギリシャである。大理石の、完璧な美しさを持った人型のオンパレード。美神たちや、神々しいばかりの肉体美の青年像、はるか昔の市井の人々の暮らしが見えてくる様々な年代の人々の墓碑、ユーモラスな演劇用の仮面、有名なあの哲学者、あの詩人、あの劇作家たちの頭部像(ソクラテス、プラトン、アリストテレスが並んでいるところは、その「顔」の違いに性格の違いを想像したりして妙に面白かったし)、最後には、ルーヴル美術館の宣伝を兼ねた、2つのヴィーナス像(今回は来なかったミロのヴィーナスと、展示されていたアルルのヴィーナス)の様式の違いを解説した短い3D映像も上映されていて、非常に面白かった。

中でも特に気に入ったのが、上に貼った画像の壺。「赤像式オイコノエ ふくろう」。

この赤像式の陶器は、「ベルリンの至宝」展でも登場していたが、日本人にはこの色彩は、どう見ても漆器である。手で触れてみないことには、陶器だとは信じがたいのだが、とにかく黒地の陶器に赤い彩色の図案を描いたものが赤像式というものらしい。逆に赤地の陶器に黒で図案を描いたものは黒像式で、こちらの方が赤像式よりも先に歴史に登場する。そんな、神話の場面や、人々の生活風景、芝居の1シーンなど様々な図柄の赤像式や黒像式の陶器が、いくつも展示されていた。

オイコノエとは、大きな酒器から小さな酒器へワインなどを注ぎ分ける容れ物のこと。容器は、用途と大きさによって皆、名前が異なっていて、それがいくつもいくつも展示されているものだから、しまいには、しばしば登場する容器の名前を覚えてしまった(←すぐ忘れました)。映画『アレキサンダー』で、大王が酒を飲むのに使っていたいくつかの器は、何と言う名前なのかなどと考えたりもした。道具つながりでは、陶器ではないけれど、スポーツのあとに汗と垢をこそげ落とす器具というのも、不思議に印象的だった。

さて問題はふくろう。ふくろうは、アテナ女神(ミネルヴァ)の象徴で、このオイノコエに描かれたふくろうは、甲冑を身につけ、縦と槍で武装している。両脇に見える細長いものは、オリーブの木で、これもアテナの聖木だそう。丸い目玉に小さなくちばしで、とぼけた表情をしているのに、足のつめは鋭く、槍を持つ腕は筋肉質である。そして、あんな丸い頭に、無理矢理のように兜をかぶっているのが、どうしようもなくかわいい。槍を持たせたためか、身体が少し前傾しているところも、図案としてかわいい。ほかに展示されていた赤像式の陶器は、壺のたぐいも、杯も、割合大きなものが多かったのだが、これは非常に小さく、その大きさも、武装したふくろうが、ぎりぎりの線で不気味ではなく、かわいいものになっている理由かと思われる。

図録に書かれた解説にも、「このオイノコエは、一見稚拙のように見えて実は意外に達者な、ある程度の技量を持った画工が余技に手がけたような運筆で、いかにも子供が喜びよそうなユーモラスな表現で、オリーヴの木と武装したふくろうが描かれている」とある。すみません、子供程度の脳のおばさんも喜びました……(汗)。

大王と対面した感想はというと、これはやはり凄い存在感だった。隣に、重厚なデモステネス像(←渋くて素敵な親父だ)などもあったのだが、彼らの人間的な表情に比べ、アレクサンドロス像はむしろ神像に近いような圧倒的なパワーを感じた。だが、あくまでもイデアの発現である神々たちの像よりは、元が本人をモデルにしているだけあって、完璧な顔立ちではないところに、また別の意味でリアルな力が加わっていると思う。この人の目がこちらを見つめたら、本当に怖そうだ。

ミュージアム・ショップではこんなものも発売されていた。このインフォメーションにあるような重厚感など、全然なかったけど……。海洋堂制作の食玩あたりで、ギリシャの神々シリーズでもやるほうが余程良いんじゃないか(って、全部大理石風じゃ、色味がなくてつまらないか……)。

→展覧会は8月20日まで(9:00~17:00)。

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