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2006.08.27

一足お先に遭遇

23日(水)に試写会にて、『グエムル 漢江の怪物』を見る。

(公開前で、多くの人が期待を寄せている作品なので、ほとんど当たり障りなく書いてみる)

ポン・ジュノ映画の特徴は、『ほえる犬は噛まない』ならドタバタコ喜劇の、『殺人の追憶』なら刑事物サスペンスの、そして『グエムル 漢江の怪物』なら怪獣パニック映画のスタイルをきっちり踏んで、その形で楽しませながら、実はすべて、その実体は人間ドラマであると言われる。

今度の『グエムル』の中で驚かされるのは、そのスピード感ではないかと思う。何よりも「怪物」の速さたるや驚異であり脅威である上、撮影中の話などからもよく聞かれたように、出演者もほとんど走りっぱなし、動きっぱなしなのである。内容は、監督自身以前から語っていたように、ソウルという大都市を流れる川(漢江)に出現した怪物にふりまわされる人間の話であり、主演のソン・ガンホを中心としたパク一家の話。既に言われる「ポン・ジュノ節」といったスタイルは、語り口や映像だけではない。音楽も、いかにも彼らしい、『殺人の追憶』同様の感触を持つ、せつなさと美しさと悲しみのないまぜになった器楽曲だ。

パク一家の長男で、中学生の娘ヒョンソの父でもあるカンドゥを演じるソン・ガンホや、その父(ヒョンソの祖父)であるヒボン役のおなじみピョン・ヒボンの達者さ、見事さは言うまでもないが、今回も、強烈な人間的魅力(←「良い人」という意味での魅力ではなく、欠点を含めた人間臭さの魅力)で素晴らしいキャラクター造形を見せるのが、カンドゥの弟、ナミル役のパク・ヘイルである。今回もまたこれまでと全く違う印象を残す演技で、ソン・ガンホを頂点とする三角形の底辺の一角をピョン・ヒボンとともにがっちり支えて、劇の陰影を深めていると思う。ペ・ドゥナ(カンドゥの妹ナムジュ)は、パク一家の男性3人が形作るキャラクター大三角形からはじき出されてしまっている印象もあるが、この人の役はこの映画において大きな役割を背負っているので、それだけでもう十分だと言えるかもしれない。

中心になるのは怪物とパク一家との戦いなのだが、時には異様な可笑しさすら見せながら戦う、「丸腰」のパク一家の死にもの狂い、その異常な状況下の人としての正常さ(確固たる「個」としての意志)が、彼らを取り巻く世間(行政府だったり、マスコミだったり、国家だったり、病院だったり、「市民」だったり)の「ヘンさ」をじわじわっと感じさせる。あくまでも、「じわじわっ」となのがうまいところだと思う。

そして父と娘の物語だと思ってみていたら、気付いたら最初から最後まで、三代にわたる「父と子(息子)」の物語だったりもする。ラストまで超特急で引っ張っていかれながら、『殺人の追憶』よりも「ほっこり」と終わったりして……。

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