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2006.03.16

断背山雑談

(近況に書きかけたが引越し)

もう、「その後」を日本語で報道してくれるところは Newsweek 日本版しかないのか。3月8日号に引き続き、3月22日号(15日発売)にBBMのオスカーの結果の記事

で、「YES」も発売に……。BBMの特集では、毎週火曜日の朝にTBSラジオで映画情報を語ってくれている今野雄二氏(BBM劇場販売パンフレットにも評を書かれていた映画評論家)が、いかにも「らしい」、優しい原作評を寄せられている。今野氏といえば、ラジオのBBMの回のときには、封切に合わせて、BBMとシリアナをガイドされたのだが、シリアナに比べてBBMを語る時間が余りに長く余りに熱く、司会の森本毅郎氏に揶揄されていたっけ……(笑)。

面白いのは、もう1人、同誌のBBM特集に映画について書かれているおなじみの北丸雄二氏も、文中で今野氏と同じ原作の一節を引用していること。例の最後のジャックの回想の「立ったまま眠る」あの場面だ。しかも北丸氏は、(映画評ということもあり)自身の言葉で原作のその箇所を訳されている。米塚氏の訳文と比べてみるのも一興。短いけれど、人によって訳す言葉はこんなに違うんだなぁと……。で、やはりあの場面は、あの小説の1つの核であるのだろう。

その「YES」に載っていたBBM雑学によると、ラストのシャツの重ね方は、ヒース・レジャーのアイディアだったそうなのだ。

でも自分は最近、それについてつまらぬ冗談を考えていた。それは……実は、イニスの生活は困窮していたため、トレイラーのクローゼットの中には、針金ハンガーが1本しかなかった、というもの。ジャックの形見のシャツを飾ってみたのは良いものの、自分のシャツをかけるところがなくなったので、仕方なく上に重ねてかけた、と。自分のを上にかけておけば、時折、着るのに簡単だし……(笑)。

(ああ、でも原作じゃあ、シャツは釘に引っ掛けていたという描写があったから、別に自分のシャツをかけるのにハンガーなんかいらないのか……)

プルーの、ワイオミングの風土のような厳しく荒涼たる小説の中の、さりげなく差し出された動かしがたい感情の断片を、よくぞあの映画はすくい上げ、あそこまでエモーショナルな作品に仕立て上げたなと、本を読んでいてつくづく思う。小説世界と映画の両方をどちらも享受できることは、何と幸せなことか。

多分、原作者のプルーだってそう思ったに違いない。(あの映画ができたことを)「幸せ」だと。だから、あの記事を書いたのだろう、またも世界中で物議をかもしているあの記事を……。

英文を普通に読める人なら何でもないことなのだろうが、辞書を引き引き読んでいる記憶力のおとろえつつある中年には、知らない言葉を1つ覚えるだけでも時間がかかる。でも、余りにあちこちのニュースやコラムでBBMの形容詞として見かけたため、最も早い段階で覚えた単語が、今やBBMの枕詞にようになってしまった "controversial " だった。静かな小説世界とは裏腹に、どこまでも controversial なBBM周辺である。

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コメント

diabloさん、おひさしぶりです!

コメント、ありがとうございます。いや、デイリー・バラエティ紙の件は、先週の始めあたりからしばらく、ここの右サイドバーに、以下の新聞広告の画像とともに、ファンサイト(Ultimat……)へのリンクを貼っていたのですが、ここのトップページがBBMだらけだったのが、まるで自分の脳内を披瀝するようで恥ずかしくて、一昨日あたりだったか消したばかりだったのです。米塚さんの翻訳の訂正ページへのリンクなども共に……。
http://ishiko.way-nifty.com/bestpic.bmp

私も大変へそ曲がりなので、diabloさんのお気持ちはわかるつもりです。映画は逃げませんので、あせらずに、でも、できれば映画館でかかっているうちに見にいってください。あの広大な風景を、大スクリーンで見るチャンスを逃すのはもったいなさすぎます。でも、あわてることはないです。然るべきときに、じっくり向き合うのが似合う映画だと思います。

roseroseさん、こんばんわ。

映画、ご覧になれて何よりです。

主演男優賞は、私はBBMでこそとってほしかったと思うのです、作品賞同様に……。まあ、済んでしまったことなので、どうしようもないですが……。脇をかためていたベテラン俳優たちも、さりげなく素晴らしかったですね。アギーレやジャック父、ジャック母、ジャック義父、などなど……。でも、BBM出演俳優陣の中で、今後の作品「要チェック」俳優の筆頭は、自分的には、『ランド・オブ・プレンティ』以来大好きになったミシェル・ウィリアムズだったりします。

Crash 、私もマッド・ディロンの老親介護には涙にじみました。彼のセクハラがチャラになるくらい(笑)。
BBMはついに見ることができました!とっても、アン・リーな映画。私も泣きはしなかった(娘との会話でちょっと涙)のですが、余韻が未だ続いています。ヒース・レジャーの演技は、素晴らしいの一言でまさにEnnis本人でした。彼はインタビューなど読んでも本当にEnnisを理解してると感心します。主演男優賞が取れなかったのは不思議ですね。腐らないで、今後も精進すれば将来の受賞は確実なのではないでしょうか・・。

ご無沙汰しております。
実はまだ観てないんです。(汗)
元来へそ曲がり故、本当は我がカテゴリーど真ん中作品なのに、
世間の盛り上がりに妙に冷めてしまって、急いで行く事もなか
ろう~後で観に行こうと天邪鬼ぶりを発揮してます。(苦笑)
さて、もうご存知かと思いますが米映画紙デーリー・バラエティーに
断背山のファンたちが寄付金を募って「私たちの作品賞はブロークバック」
と言う異例の広告を出稿しました。
そんな事を知ると、己の天邪鬼が恥ずかしくなりました。でも今は期末で
なかなか観に行けなく、バチが当たったかも。(涙)

フェイユイさん、こんばんわ!

近況はログに残さない(恥ずかしい)ことを気軽に書くことにしているので、更新しちゃってなくなってしまい、すみません。コメントありがとうございます。

マット・デイモンは台詞がいいですねぇ。もともと好きなんですが……。

ヒース・レジャーは、私は、見逃した「ロード・オブ・ドッグタウン」が作品自体すごく良いと聞いたので、見るのにを楽しみにしています。たぶんBBMの彼は、フェイユイさんには、さらにツボだと思いますよ。全く、全く、ジェイコブとは違いますので死ぬほど驚くとは思いますが……。わかりやすく言うと、BBMにおける、ヒース演じるイニスは、もうほとんど(高倉)健さんの領域です。しかも、もっと「うらぶれている」。

まあ、ギリアム作品のシニズムとイマジネーションと(あるゆる事物&人物の)可笑しさ可愛さは、言うまでもなく最高ですね。

こんばんは。「近況」のコメントをここに書いてしまってすみません。
「ブラザーズ・グリム」にドはまり中のフェイユイです。石公さんもご覧になったということでたまらずに書いております。
ヒース・レジャーをこういう形で初めて見てしまって愛してしまい、どうしようかと悩んでおります。ブログでしつこいくらい繰り返しているんですが、この可愛さって一体。
私は「BBM」を観た時に思い出してばたばたしてしまうのでしょうか。(石公さんを問い詰めてどうする)同時に今までになくマット・デイモンのよさに心臓を撃ちぬかれてしまいました。
なんだか変な恋文を書いてしまったようです(笑)
石公さんが「BBM」に呪縛されている時、私は「グリム」の森に迷いこんでしまいました。

roseroseさん

「クラッシュ」を見るまではお返事できないと思い、放置状態ですみません。

「クラッシュ」、見てきました。素晴らしいと思いました。音楽も大好きだし、心憎い脚本です。泣けました。BBMで涙は出ませんが、「クラッシュ」の、マット・ディロン演じる警官の、親父の深夜のトイレのシーンであたりで涙が出ました。単に実体験に即したものにしか涙腺が反応しないという、鈍感な人間であるだけですが。

でも、プルーは筆がすべったわけではなく、心からそう思ったのでしょう。私自身もあの記事を見て、首を縦に振って大きくうなずきました。迷妄といわれてしまうかもしれませんが、作品賞、主演男優賞(こちらはPSホフマン本命とは大分言われていましたが……)については、返す返すも残念です。

こんにちはお久しぶりです。やっと来週にはBBMが見られそうですが、さんざん事前知識を仕入れてしまったため、純粋に感動できるかどうか心配なところです。プルーのあの文章は筆が滑ってCrashをTrashなどと書いたことなどで顰蹙を買っているようですね。でも、WOWWOWでリアルタイムでニコルソンの発表を聞いて何とも形容しがたい思いになった者にとっては、文章全体は同感できるものでした。アメリカでなくイギリスの媒体に書いた点も彼女の心情が伺える気がします。Crashも良い映画とは思いますが、今ひとつ、感動できませんでした。 Capoteが秋まで見られないのは大変残念です。

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