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2006.01.12

書きかけの感想、断背山など

◆断背山、日本では3月4日に封切日が決定(シネマライズのサイトより)。日本公式サイトもできた(日々お世話になっている劇場公開映画リンク集のサイトより)。

町山智浩氏は自分のサイトでも断背山について書かれているが、抜群に面白いのは毎週出演しているTBSラジオ『ストリーム』の「コラムの花道」のコーナーでの本作の紹介。ダウンロードしてたっぶり聞ける。論旨はほとんどみうらじゅん状態だ(笑)。

このあたりの話をさらにシリアスにグレードアップして論じているのは、海外小説の翻訳などもされているジャーナリスト、北丸雄二氏の自身のサイトでの記事。ヤオイ女に厳しいこんな記事もアップされている。職業として物を書いている人間の心構えとなれば「他人事」かもしれないが、ヤオイ根性のお気楽さへの指弾と取れば、(自分を含め多くの人が)読んで馬耳東風ではいられないだろう。


◆今さらながら、昨年のフィルメックスの書きかけの感想などを、このままだと決して続きが書けそうもないので載せてみる(すみません!)。このほかにも何本か見ているのだけれど……。

『サグァ』。カン・イグァン監督。韓国映画。2005年作品。シネカノン有楽町で見たのでQ&Aはなし。平凡に始まり、どんどん怖くなり、愛の幻想を描いたものかと思いながら見ていたら、やや甘めのラストがやってきて、自分の解釈が違っていたと気付く。カタログなどを読んでも、確かに監督は「人が誰かを愛する過程」と「それがどういうことなのか」を描いたと言っているが、うーんそんなテーマだとしたら、(こんなことを言うのは差別的かもしれないが)男性的だなぁ、甘いなぁ、と思った。まあ、そんなふうに思ったのはラストだけで、それ以外は、女性(妻)が妊娠していようが、子どもを産もうが、そういう状況と男女の関係を全く切り離し、夫婦や夫婦のまわりの人間たちの「固対固」の関係に的を絞った描写が非常に新鮮で、面白いと感じた。ムン・ソリのすごさはもちろんだが、相手役のキム・テウもすごく良い。でも、あんなリアルな人間関係を2度は見たくない気がする。見た人は誰もが、胃の腑の重くなる思いがしたんじゃないかと思う。……でも、監督意図どおり、(ラストを、ある意味での到達点として)愛にたどり着く過程を描いていると思えば、作品全体の見え方も変わってくるのだろう。自分は監督意図とは別の見方をする方が、殺伐とはしてしまうがぐっと興味深いと思った。

『地獄』。中川信夫監督。日本映画。1960年作品。おなじみの、閻魔様がいて、業火が燃えたぎり、血の池があり、賽の河原のある、あの地獄を描いた後半よりも、登場人物が地獄に落ちる因果を描く前半の、人の世の生臭さ、はかなさ、冥さの方が、まさに「地獄」といった感のあるカルトな作品。ぜひ『思春の泉』とともにぜひDVD化してほしい(笑)→追記:DVD化されている。今回のフィルメックスでは『私刑(リンチ)』と合わせて3本の中川作品を見たが、たった3本でも同じ監督の作品とは思えないこのジャンルと表現の幅広さは何なんだ。主人公の清水四郎(天地茂)を、悪魔のささやきで地獄へ誘う大学のクラスメイトの田村(沼田曜一)が素敵♪ 地獄という概念は人間が本来持っている罪の意識を救済するために人が生み出した概念で、だから、どの宗教にも必ず地獄思想があると、映画の冒頭、主人公清水の学ぶ大学の教授(清水の婚約者の父でもある)が講義で述べる言葉が印象的だ。しかし、三ツ矢歌子って、あんなに可愛かったんだ~。びっくりだ。 追記:中川信夫監督の作品は、2006年2月のベルリン国際映画祭のForumで特集上映される。

『落ちる人』。フレッド・ケレメン監督。ドイツ/ラトビア映画。2005年作品。中川監督の『地獄』を見た直後、フィルムセンターから急ぎ足で朝日ホールに向かったのだが、上映開始に間に合わず、肝心の冒頭の人が「落ちる」部分を見逃す。しかし、ほとんど『地獄』の続きとも思えるような、これまた因果がめぐる不思議な話で、しかも「落ちる」がキーワード。落ちる先は地獄かもしれないし、日常かもしれない。そんな意味でも面白かった。河から身投げをする女性を目撃した文書保管所の事務員が、見ず知らずの彼女の身投げの原因を探っていくという映画。Q&Aの中で監督が語っていた「落ちる」に関してと、なぜ警察でも探偵でもない男が事件を追っていくのかについての話が、作品をほとんど言い表していたように思う。「落ちる」とは女性の身投げを指すだけではなく、登場人物すべてが今の状況から別の状況に落ちていく(あるいは「落ち着く」)と言えるのだそうで、ある者の落ちゆく先は死という無の世界であり、ある者の落ちつく先は家族の元であり、おる者が落ちた後は日常に戻る。

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コメント

亮香さん

李青と趙英はカップルというよりは、ほとんど李青の中の幻想ですからねえ。そういう意味で「より現実的」な、古書店での再会シーンが、甘くてほろ苦くて、私は好きです。

そう、いつも思うのは、范植偉や楊祐寧や張孝全もそんなことを言っていたと記憶していますが、香港や台湾の若手男優が同志の役柄を演じた後のインタビューなどで、よく「(学校時代のクラスメイトなど周囲に)ゲイの友人がたくさんいたから、演じるにあたってはそんなに大変ではなかった」というような発言をしていること。

BBMでも、主演男優2人は「親戚の叔父さんがゲイだった」とか「友人が……」とか言っていたかと思います。

日本の俳優が同性間の恋愛の話や同性愛者の役柄を演じても、あまりそういう発言はないですよね。特に若手など「クラスにゲイの友だちがいたよ」なんてことはまず聞かない。

学校にも会社にも「いないことになっている」などとよく言われますが、日本には、歴史的な積み上げからくる「感覚的寛容」(ただし他人事ならという限定つき、だろうか?)があるにもかかわらず、それ以上に、"ニッポン"というムラ社会の「オキテ的倫理的抑圧」が強烈なのだなと感じます。

石公様、ご無沙汰しております。‘ここでしかウケないネタ(@ゆうこ様リンクより)’へのコメントです。思えば ‘ここぐらいでしかお目にかかれない‘范植偉記事に初コメントさせて頂いて早一年。「小偉&祐祐」の名に釣られのこのこ出て参りました。雑誌「yes」の表紙(次号はH・レジャーだそうですね)の楊祐寧の逞しい青年への変貌(成長)ぶりに感嘆しながらも、「ニエズ」&MV「傷心的歌」での二人がまさに少年の無邪気さを放ち瑞々しく輝いていたのが余計に愛おしく思い出されました。そういえば「傷心的歌」の設定は30年後の再会を虚実に幻影化したものでしたが、20年間愛を育くんだという「断背山」の二人の姿にも通じるカップルではないでしょうか?運命的出会いという意味で、このおばばはこの二人に投票したでしょう。戯言ですみません。

@ゆうこさん、お久しぶりです。

おお、すばらしい! 「孤戀花」を読まれているのですね。私はまだ映像すら見ていないのですが、出演者は龍子さんはじめ女優陣も大好きなのでいつかは見たい……と思いつつ、なかなか頭が東を向きません。

リンクをありがとうございます。自由時報はバックナンバーがきっちり見られるので、ほぼ毎日チェックはしているのですが、この日の記事は見落としてました。相変わらず、小偉と祐祐のカップルは人気があるのですね。何せ「青春の美しい思い出」(監督弁)の権化ですからね。頭があさっての方向に向かっている私でも、ニエズの音楽だけは頭の中から消え去ることはなく、今でもよくあの曲の数々が脳内をぐるぐる回ります。

そう、貼っていただいた記事の1週間ぐらい前、断背山台湾封切のころでしたか、プレミア上映だったかにやってきた張震と陳柏霖が、やはり同じようにポスターのポーズを真似て写真をとり、断背山続編はタイトル「阿里山」でぜひ我々が……と言ったとか言わないとかいう記事に爆笑した覚えがあります。
http://www.ettoday.com/2006/01/22/340-1897452.htm


>李安つまり中国系の監督であることが
殆ど紹介されないのは、気になります。

そうですね。でも仕方ないことかもしれません。

どこかで書いたかもしれませんが、旧正月のころ、ゴールデングローブ受賞をみやげに、港台での断背山上映の宣伝のために台湾に戻った李安が台湾の映画について語った短い記事が、朝日新聞の夕刊に写真つきできちんと取り上げられていました。

ヤオイ云々は別として、確かに雑誌などの映画紹介では、どうしても内容メインになりますよね。分量が限られる紹介記事のようなものの場合、監督・キャスト・内容の中で最も読者にインパクトを与える部分を書くとしたら、断背山の場合、やはり「監督」より「主演俳優」より「内容」ということになるような気がします。

評論ならなおさら、李安が華人であること、彼がつくってきた過去の作品を踏まえて、断背山を論じることは難しいだろうし、それができる評論家は(もちろんいらっしゃるでしょうが)多くはないと思うのです。

お久し振りです
ニエズ原文がちっとも進まないのに
孤恋花に手を出してる@ゆうこです。

今更 この記事にコメントもヘンなのですが、
あまりにもくだらなく、ここでしかウケない
ネタを発見しましたのでリンクします。

【亜州版断背山網友票選 金城武・王力宏】
http://www.libertytimes.com.tw/2006/new/jan/29/today-show1.htm

なんだかなー。

石公さんも書かれてるヤオイについては
各メディアに取り上げられる際、そればかりで
李安つまり中国系の監督であることが
殆ど紹介されないのは、気になります。

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