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2006.01.10

ことし最初の見世物小屋へ

ということで、何も書かずにすっかりバカになっている頭で、見た映画の雑感を並べてみます。

●『ロード・オブ・ウォー』(@地元シネコン)。――やっと見た。もともとは、『アレキサンダー』でヘファイスティオンを演じたジャレッド・レトの出演作(武器商人である主人公ユーリー・オルロフ(ニコラス・ケイジ)の弟ヴィタリー役)という意味での興味だっが、作品は強烈に皮肉の効いた社会派エンタテイメントで、その意味で資金調達の苦労などもあったというが、鳴り物入りのブロックバスターの興業が今ひとつ伸びない米国映画の中で、社会派作品が少しずつ脚光を浴び出しているというこのところの、まさに時流の作品の1つと言える。主人公は、「武器商人」の持つイメージを上手く戯画化したキャラクターで、しかもリアルに人間臭く描かれている。実際、(ステレオタイプな連想で申し訳ないが)笑うせえるすまんよろしく、アタッシュケースにダークスーツで、一国の要人にサシで「商品」を売り込むために身体1つで世界を飛び歩く、絵に描いたような「商人」なんているわけないだろうに、まさか……。でも、それはそれ。主人公のユーリーが武器セールスマンとなるいきさつは、「オルロフ家サーガ」として物語れそうなほどしっかりしているし、彼の職業へのスタンスや、家庭人としてのあり方、「平和的」で近視眼的現実的な性格描写は、そんな彼の仕事を必要とし、需要も供給もある巨大な世界(=戦争の火種の絶えない世界)を強烈なアイロニーで彩っている。世界の戦場を股にかける商人が登場し、結末もでかいことを言っている割には、映画としてはプライベートなサスペンス物の趣きだが、ウクライナのエピソードやアフリカでの自家用飛行機のエピソードあたり、迫力もあり、非常にコワ面白かった。ジャレッド・レトはタイプキャストというか何というか、まあイメージどおりの役どころですが、コック姿もかわいくて、出演作としても全く悪くないし、良かったんじゃないすか?(やっぱり、兄にすがる病院行きの車中とか、注目しなきゃいけませんかね?)

●『秘密のかけら』(@シャンテ)。やはり、秘密は秘密であり、秘密にしたい人間がいる以上、暴いてはいけないのだ。自分はそう思った。もちろんそれは、プライバシーの話。社会的に暴かれなければいけないものは、公にすべきだろう。原題(原作タイトル)は"Where The True Lies"。日本語にすると「真実のありか」なんだそうだ。「秘密のかけら」でも「真実のありか」でも何でもいいが、それを探していたのがヒロイン、アリソン・ローマン演じるジャーナリスト志望の教員カレン・オコナー。彼女が、自身のアイドルだった1950年代ハリウッドのエンターテイナー、ラニー・モリス(ケビン・ベーコン)とヴィンス・コリンズ(コリン・ファース)のコンビにまつわる殺人事件のなぞを究明し出版しようと画策するというサスペンス映画。あけすけな人々、あけすけなセックス、あけすけな死体、あけすけな薬物依存が、そのえげつなさを忘れさせてくれるほど美しい画面、まるでラニーとヴィンスのステージのようにきらびやかに美しく演出されて差し出される。でも、出演者に対する興味もなく、監督の趣味とも合わない人には、絶対的に「長い」1時間48分に違いない。ヒロインのアリソン・ローマンは、自分は『ホワイト・オランダー』で見て以来だったが、20代半ばにしてあの童顔の、トレンチ・コートでヒールはいてもアイリス(ジョディ・フォスターin『タクシー・ドライバー』)にしか見えないヤバい感じは、この映画にはうまく作用していたと思う。彼女の2つのベッド・シーン、監督の十八番なんだろうが、本当に美しかった。原作は、全編コミカルなタッチで、しかもどうやらハッピーエンドなのだと言うが、映画のこのラストの、にがいような苦しいような安堵のような諦めのような「不味い」感じは、アトム・エゴヤンならではの期待にそうもの。展開そのものが、なぞ解きよりも、虚像が壊れては生き続けられない芸能界の人々の、スポットの当たってしまった人生の中の特殊な心理状態と、本当の自分とイメージの自分に引き裂かれていく人間のどうしようもないありように焦点が当てられているからだろう。コリン・ファースより、ケヴィン・ベーコンの方が色っぽいし、ぐっとおいしい役どころだが、コリンは静かに作品を支えたと思う。ヴィンスのラストシーンは、冒頭のショーのシーン(および暴力シーン)を振り返るとぐっと切ない。

●『ブレイキング・ニュース』(@シアターN渋谷)。『ロード・オブ・ウォー』同様に、情報操作を行う当局をシニカルに描いて見せた作品だが、こちらは社会的な問題意識など大してなさそうだ。もちろん『ミッション』同様の美意識と、『PTU』同様のユーモアは健在。ケリー・チャンも、『インファナル・アフェア』のお飾り系の女医役より、かわいそうなぐらい面白くてよかったんじゃないかと……。結局は、強盗さんと殺し屋さんの「火事場」のお料理シーンを、ほろりほっこり描きたかったのかね、ジョニー・トー。いやだ、いやだと思いながらも、映画としてあまりにかっこよく、酔わされてしまうので、ついつい見てしまうのであった。でも、今回結構穴が……。

映画館まわりついでに、『白バラの祈り-ゾフィー・ショル、最後の日々』と『変態村』と『ブロークバック・マウンテン』の前売りを買いました。各作品ともポストカードがおまけだったのですが、BBMはA4に近い巨大なサイズのはがきでした(図柄は、あの帽子をかぶってうつむいた2人のおなじみのもの)。せっかくシアターN渋谷に行ったのに、『ホテル・ルワンダ』の前売りを買い忘れました。

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コメント

shitoさん、おはようございます。こちらこそ、ことしもどうぞよろしくおねがいいたします。

shitoさんのところの「キング・コング」評、楽しく読ませていただきました。いや、ふだんこの手の大作を見ようとは思わないんですが、「キング・コング」はどうも、どこを見ても「傑作」との声が上がっているので、かなり気になっています。監督、俳優陣とも興味深いメンバーですしね。

「秘密のかけら」は、ロリとヤオイは是非見にいって……おっとっと……そんなやつら(→俺だよ)に見せておくのはもったいない凝った映画。作品評としては、柳下毅一郎氏だったかが書いていた「ケビン・ベーコンならそこはウェルカムだろう」ってのが、一番面白かったかもしれません(笑)。

「変態村」、前売りを買いましたが、正直どんな作品か予想がつかないだけに、吉とでるか凶とでるか(自分が気に入るタイプの作品か否か)博打的な楽しみもあります!

石公さん、ご無沙汰しておりました。
本年もお邪魔させていただきますが、どうぞ宜しくお願いいたします♪

先月から今月にかけては観たい映画が続々でして、どうにも見逃しているものが多いのですが、私も『秘密のかけら』は絶対観たいと思ってる作品の一つですが・・・間に合うかなあ。
石公さんの文章を読んで、これは無理にでも行かなくては!と思うのですが。

そうそう、『変態村』の予告を観たのですが、これはオモシロそうですね!! かなりそそられました。田舎はコワい&監禁モノ系の雰囲気でしたが…(笑)

と、とりとめのない雑コメントで失礼しました。
多忙を極めてらっしゃるようですが、ご自愛なさってください。更新も楽しみにしておりますので!

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