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2005.12.13

Critics Love BBM

"断背山"こと『ブロークバック・マウンテン』は、12月9日にニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコの3都市の5館で小規模に限定公開されたが、LA批評家協会賞から始まって、American Film Instituteの2005年のMOVIES OF THE YEAR の10本にも選ばれ、ボストン批評家協会賞、そして歴史あるNY批評家協会賞(作品賞、監督賞、主演男優賞(ヒース・レジャー))もとり、アカデミー賞まで続いていく米国の賞レースの本命作品となってしまった。まだまだ賞はあるので、これからも何かニュースが聞けるに違いない。封切直後の週末で54万ドルを超えた興行成績も、R指定のアメリカ映画のアベレージとしては新記録だそうだ(→台湾聯合晩報)。「混んでて入れなかったよ」という書き込みを、向こうのblogでも目にしたし……。このあたりのことは「オスカーノユクエ」さんが詳しく書いてくださっている。特に作品内容に触れた部分、なるほどと納得。
(※)ちなみにNY批評家協会は、外国語映画賞と撮影賞に『2046』を選んでいる。

作品賞に《Good Night, and Good Luck》を選んだ全米映画評論委員会(The National Board of Review)では、監督賞(李安)と助演男優賞(ジェイク・ギレンホール)を獲得→記事。なおここでは、助演女優賞は『SAYURI』の鞏俐(コン・リー)、新人女優賞は《The New World》で、ポカホンタスとして14歳にしてコリン・ファレルと情熱的なラブシーンを演じリテイクを食らったと言われる Q'Orianka Kilcher(でもきっとコリン・ファレルのせいだろう(笑))。で、最も気になる作品が、主演女優賞をとったフェリシティ・ハフマンの《Transamerica》。日本では見られるか?

さらに、サンフランシスコ批評家協会賞(作品賞/監督賞/主演男優賞)も。


"断背山"は来週以降全米各地で公開され、オーストラリアでは1月、また台湾でも1月に公開予定。日本は3月に渋谷のシネマライズ、新宿武蔵野館、シネリーブル系などで公開予定とのこと。
(リンクはワイズポリシー(NEWSページ参照))


そんな中、こんな苦い記事も書かれていた
  →"A "Mountain" of Uncomfortable Laughter"。

これは作品評ではなくコラムである。筆者が『シリアナ』の上映館で、BBMの予告編上映のときに聞いた笑い声――主人公たちの抱擁の場面で劇場内に広がった笑いを耳にした体験から書き起こされた、ちょっとしたコラムである。

記事のタイトルを見たときに、米国での『アレキサンダー』の上映時(といっても必ず全ての劇場でというわけではないだろうが)、幾つかのシリアスな場面で笑いが起こったという、ファンにとっては非常に辛い話を思い出したが、この記事の中でショックだったのは、笑いが起こったということだけではない。

この劇場で上映されていた『シリアナ』(スティーブン・ギャガン監督、ジョージ・クルーニー、マット・デイモン主演、日本では2006年2月公開予定)は、アメリカの石油産業と中東情勢、先進国で起こるテロなどを一連のものとして告発した社会派のハードな作品で、決して単なる娯楽作品ではない。そういう映画を選んで見に来る観客たち――しかも、保守層の多い地域ではなく、住民の90%が大統領選で反ブッシュ票を投じたという圧倒的にリベラルなエリアにある劇場の観客たちが、見るつもりのなかった男性同士のラブシーンのワンショットに反射的に笑ったのだという。……「道のりは遠い」と筆者は書いている。

もちろん、カナダでの11月の試写でも出演俳優はとても良い感触を得たようだし、プロデューサーの非常に鷹揚な態度も頼もしい。ちょっとした記事だから軽くまとめらている感じだが、だかしかし、考えさせらるところは多い。いや日本だったら、笑いという情動よりは、しーんと白けちゃったりするんじゃないかと、『アレキサンダー』に来ていた高齢の男性客層なんかを思い浮かべて想像したりする……。米国でも日本でも、映画本編を見る人たちは、『アレキサンダー』と違い、映画の内容をある程度知って見にくるわけだから、笑いも白けもしないだろう。このあたりはBBMの強みだ。嫌な人は最初から見に来ないだろうから。でも、だからこそ「見に来ない人」たちにも見せてしまう予告編への「ナマなリアクション」が、「劇場中に広く巻き起こった笑い」だったなら、それは、作品を愛する人たちや笑わない側にいる(という言い方はあまりよくないかもしれないが)すべての人々にとって、何と言うか、やはり確かに――厳しいと言えば日常はもっと厳しいし、うんざりするとも言えるし、がっかりしたと言っても期待していたわけではないし――記事のとおり、"Unconfortable" としか言いようがないのかもしれない。

記録を打ち破るほどの興行成績といっても、今の規模はミニシアター公開に毛の生えた程度のものなのだろう。映画ファンと批評家たちに支えられた芳しい評判が、これから広い範囲で様々な層に見られていくにしたがい、作品への評価とは別の部分で、人々にどう受けとめられていくのか。(必ずや存在する「アンチ」の人々の影を見つけるにつけ)、ひっそりと騒がずに、原作者の小説のように静かに、動向を気にかけていようと思う。自分の「受け止める」順番が来るまで。(いやあ、もう、賞レースの結果は追っかけたくないですし……)


(おまけ)
"断背山"のことを考えていて、どうしても考えてしまい見てみたのだが――内容は全く関係ない――ピーター・レフコートのサイトがある。そこに彼は、ファンからしばしば受ける『ニ遊間の恋』の映画化に対する質問に関して、簡単な文章をアップしている。映画化のチャンスは、出版から現在に至るまで4回ほどあったそうだ。しかし、いまだ実現しないことを例えて、自分は父親のようだと、魅力的で始終デートに誘われてはいるが、なかなか結婚しない娘を持っている父親のような気分だと言っている。でも、まだ遅すぎはしない、と。(ここで、読者も深~く、うなずいた)

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コメント

「ジャーヘッド」、Empire誌の表紙写真(例の裸サンタ)のインパクトはすごいものがありましたが、そのときに気になって調べていたら、内容は非常にタイムリーなもので、これはむしろ原作が読みたいと思いました。

日本じゃあ、イラクにいった人の体験記の映画とか、できないんでしょうかね(まだ"終わってない"わけだけれど……)。関連作品として「バッシング」あたりになるのかな?

映画は日本でも2月あたり公開ですね。
→日本サイト
http://www.jarhead.jp/top2.html

→原作(ジャーヘッド ~アメリカ海兵隊員の告白)
http://www.7andy.jp/books/detail?accd=31149341

当然、ご存じのインタビューでしたよね・・すみません。しかしこれ読むとワイオミング(というか、保守的なアメリカ中西部)には住みたくないわ〜と思ってしまいました。ゴールデングローブはジェイクがノミネートされず残念でした。BBMに先駆け「ジャーヘッド」も見ようかなと思っております。

roseroseさん、E・アニー・プルーのインタビューのリンクをありがとうございました。こちらはミニコミのようなところですが、リンクして問題ないと判断しましたので、頭をつけて修正しました。勝手をお許しください。

実はこの記事は私も知っています。検索をかけた人ならきっと誰でも出会うであろうアメリカの、BBMの記事カテゴリをつくって日々記事をアップされている個人Weblogは、もちろん毎日見ています。そちらにリンクされていましたよね。

なかなか英文をゆっくり読んでいられないので、きちんと見ていませんでしたが、この記事のインタビューをしたPlanet Jackson hole紙は何とワイオミングの地元紙なんですね。だから、BBMはじめワイオミングを舞台に選んで短編集を書いたE・アニー・プルーにインタビューをしたと……。サイト左端の"more Jackson Hole infomation"をクリックすると、ワイオミングの案内ページになり、思わず旅情をそそられました。

気付かせてくださってありがとうございました。

(コメントを読まれる方に情報として)
号が変わるまでは、原作者インタビューの掲載紙がフリーで以下のページからDLできます(PDF)。とはいえ、ウェブページと内容は同じですが。表紙がでっかい原作者の写真なので、ちょっと嬉しいです。
http://www.planetjh.com/paper.html

こんにちは。ここしばらく、ウェブへの書き込みはやめていたのですが、BBMに関してはついつい・・。観客は大半がゲイの方達で、ちらほらストレートのカップルも・・という程度らしいですが、アメリカってホモフォビアの国ですもの(偏見?)。BBMも、「ボーイズドントクライ」もいまだ現実の話でしょうなあ。ごく一般の映画ファンは、「ブエノスアイレス」も「藍宇」も「バッド・エデュケーション」も見てないんだろうなああ。何かのインタビューでアンが「対象はゲイの人たち」と言うと、すかさずプロデューサーが「いや、女性だ」と答えてました(笑)。ところでこちらの原作者インタビューも面白いです。
http://www.planetjh.com/testa_2005_12_07_proulx.html

賞レースは「カポーティ」がライバルでしょうか。フィリップ・シーモア・ホフマンは好きで、いつかはオスカーと思ってましたが、ヒースも頑張って欲しいです(もちろんジェイクも)。私は「にえず」DVD持ってますが、今のところ、またおぼろげ理解の中文字幕を読む元気が出ず、未見です。

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