« 映画祭ばなし 続き | トップページ | かわいい電車のぬいぐるみ »

2005.10.02

断背山原作シノプシス

ap_closerange金原瑞人さんという、大学教授で翻訳家でもある方のオフィシャル・ホームページの中に、日本でまだ訳書の出ていない、いくつかの外国小説(英語作品)の要約を日本語で載せてくださっているコンテンツがある。

この中に、E・アニー・プルーの短編集2冊の要約が存在する。1つが" Close Range : Wyoming Stories "(1999年5月発行)で、もう1つは" Heart Songs and Other Stories "(1995年3月発行)。この1つめの" Close Range : Wyoming Stories "に収録されている11の短編の、最後を飾るのが "Brokeback Mountain"である。

(もともと"Brokeback Mountain"はこの短編集の中の1作であり、今現在、amazon.comなどで買える"Brokeback Mountain"単体の書籍は、恐らくは映画化をきっかけに最近発行されたものではないかと思われるが……)

金原さんのサイトでの要約は短編集の全作品を対象としているが、中で最も長い「ブロークバック山」の文章は2000字を超え、登場人物の個性にまで言及できる分量ではないが、始めから終わりまで物語がきっちり表わされている。読むと、気になっていた映画の予告映像の各々のシーンが、物語のどの辺に当たるのか、いくらかははっきりとする。E・アニー・プルーの物語は、ドラマ性よりも、全編これエピソードといった感のある様々なディティールの登場人物たちの人間味と、突き放した描写から生まれる諦念とも祈りとも言うような静けさが魅力だと思われるので、あらすじがわかろうと何ら問題はない。

一般のホームページであり、許可を得ていないのでリンクはできないが、探していただければすぐにわかると思う(※ただし当然のことながら、版権が売れた場合は削除されると断り書きがあるので、もし別の方の訳で出版されることがあれば、こちらのページの要約文は削除されてしまうだろう)。

キャラクターの外見は、映画版の俳優さんたちとはちょうど逆になっている感じがする。最初、映画での俳優の役名を知らずにあらすじを読んだら、細面のエニスと金髪くせ毛のジャックという表記にとらわれてしまい、予告編でも最も印象的なシーンの1つであるエニスがジャケットを抱きしめて泣くシーン(映画ではヒース・レジャーが演じている)がわけのわからないことになった……。後からちゃんと調べて見れば、ヒース・レジャーが演じたのがカウボーイのエニスで、ジェイク・ギレンホールが演じたのがロデオの得意な農夫のジャックだったわけで、何の不思議もない原作どおりの展開だった。

(工具・器具には全くうといもので、「タイヤレバー」がどんなものかわからず、思わず検索して調べてしまった(恥)。いや、しっかり読めば文脈から想像はつくのだが……)

短編集" Close Range : Wyoming Stories "は、サブタイトルにもあるように、ワイオミングを舞台にワイオミングの人々を描いた小説を集めたものなのだそうで、金原さんのオフィシャル・サイトのページをご覧いただくとわかるが、それはワイオミングの土地柄ということもあり、どの話もハッピーとはほど遠い、やや猟奇的でシビアなストーリーばかりだ。その中の1つとして、「こんな人間たちもいましたよ。こんな人生もありましたよ」と差し出されたのが"Brokeback Mountain"なのである。成功者は出てこない、普通の人たち――普通とはつまり、それなりにずるがしこく、それなりにだめで、それなりに運の悪い人たち――と、そして普通以上にだめな人たちと、普通以上に不運な人たち――そんな人たちばかりが登場するE・アニー・プルーの小説の中の、1つとして……。 

ちなみに、ワイオミング(の人々)を描いた短編集の2冊目" Bad Dirt : Wyoming Stories 2 "も、既に2004年11月に発行されている。

(『シッピング・ニュース』の感想もいつか書いてみたいと思う)

« 映画祭ばなし 続き | トップページ | かわいい電車のぬいぐるみ »

コメント

shitoさん、コメントをどうもありがとうございます。

そうなんです、"Close Range"という短編集そのものが読みたくなるんです。いや、"Brokeback Mountain"だけなら、短めで原書でも読みやすいということなんですが、やはり全ての短編を日本語で読みたいですよね。切に日本での出版を望みます。

ただ、アニー・プルーの原語の文章というのは、とても特徴があるらしく、それが素晴らしいらしいので、そういう意味では"Brokeback Mountain"だけでも、理解の程度が低かったとしても原書を見てみるというのもいいのかな、とも思って気分は発注に傾いています(笑)。

読み終えられたら、shitoさんの感想(「アコーディオンの罪」)も、ぜひどこかで聞かせてやってください。

石公さんの"Brokeback Mountain"関連の記事のおかげで、私もかなりE・アニー・プルーに興味を持ち始めました。(もとは、単にジェイク・ギレンホール好きというミーハーからですが^^;;)金原氏のサイトを拝読すると" Close Range : Wyoming Stories "すごく読みたくなりますね。翻訳版が出てくれるとありがたいのですが・・・。
とりあえず、私も彼女の本を読んでみようと思い、早速「アコーディオンの罪」を購入して、読み始めようというところです。
石公さんの「シッピング・ニュース」の感想も楽しみにしております!

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/9120/6210407

この記事へのトラックバック一覧です: 断背山原作シノプシス:

« 映画祭ばなし 続き | トップページ | かわいい電車のぬいぐるみ »