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2005.02.13

見てやって、アレキサンダー

昨晩、地元のオールナイト上映で『アレキサンダー』を見る。苦手な史劇&めったに興味をそそられぬハリウッド大作だが、もちろん腐れ婆としてはとりあえず押さえておかなきゃいかん映画でしょと、バカな理由で映画館へ。

米本国での興業不振&ラジー賞への多部門のノミネート&あちこちから漏れ聞こえる悪評、の割には、それなりにちゃんとした映画だったと思う、"腐れレンズ"外しても。

大体、アレキサンダー自身も、彼の生きた時代も、今もって謎だらけなんだろう。それなら、謎のままでいいじゃないか、『殺人の追憶』みたいに(←質、違いすぎ?)。どうして遠征したのか、どうして死んだのか、どうして偉大だったのか、解明などされなくたって……。

見た人の声に不満が多いのは、歴史物というと、NHK大河ドラマのように、史実の因果関係がわかりやすく説明されていることを期待しがちだったりするからじゃないのか。あるいは、登場人物の愛憎の人間関係がクローズアップされていて"歴史上の人物も自分と同じような"人間"だったんだなあ"などと感情移入しやすかったり、あるいは、話は小難しいけれども何だか芸術的な感じで荘厳で有難く感じられたり、そんな先入観があるからじゃないのか。別にそんな期待をせずに見れば、『アレキサンダー』、楽しめると思うのだが。もちろん、息もつかせぬハリウッドアクション大作としてではなく、ほんの少し時空と人間に対する想像をめぐらせながら見る史劇としてだけれど。

そういう意味で、もしかしたら、アンジェリーナ・ジョリーやコリン・ファレルをキャスティングしたのは、彼らの現代的で強烈な個性ゆえに、この映画の見られ方という面でマイナスだった気もする。アンジェリーナ・ジョリーは好きだし、劇中でもがんばっていた。コリン・ファレルも、生き生きとしていて魅力的だったと思う。でも、もうちょっと"薄め"の俳優を使った方が、観客は期待しなかったんじゃないのか、わかりやすさとか、圧倒的な物語性とかそんなものを。もやもやと、遥か遠い歴史の物語を、そのままに見ようとしたんじゃないのか?(アンソニー・ホプキンスが出てくると、出来上がった過去の物語として、安心して見ていられるあたりの心理……)。

監督が『アレキサンダー』で描きたかったのは、「若い情熱の美しさ」なんだそうだ。ポスターの馬に跨るアレキサンダーの脚がまぶしくみえたのは、さほど方向違いじゃなかったわけだ(笑)。コリン・ファレルという人は、それだけでも活きのいいキャラクターだそうだが、スチール写真で見るよりもずっと"歴史上の偉大な人物"らしかった。いや、時折、あの目がジョージ・ブッシュに見えて(←ごめん、コリン。あんな馬鹿と一緒にして)、そうなると戦闘シーンが今のイラクに見えてきたりもしたが(あ、実際イラク近辺か)。

京都や奈良の古寺を見ると、仏や伽藍の抜けきった水墨画のような色調に、流れ去った時を感じ精神的なものさえ託してしまうが、よく言われることだが、創建当時の寺は建物も仏像も金ぴかツヤツヤだ。建物はディズニーランドのごとく、仏像は金日成像のごとく、明け透けで身も蓋もない。

(真実はどうか知らないが)日常はセックスと酒の"アレキサンダー"と噂される若い突っ張ったニイちゃん、コリン・ファレルを得て、何年も10何年もあたためてきた監督の夢のアレキサンダーを描くとなれば、そりゃ、新築金ぴかの東大寺になるだろう。芸術映画風にしてしまえば、謎が解けずとも、ストーリーにぐいぐい引っ張られずとも、見る人はそれなりに納得したかもしれないのに……。自分が描きたかったものを、誠実に描いたんだなと、他に作りようもあっただろうに、太陽を背負った馬上のアレキサンダーの明るさと眩しさとはかなさとを正直に映像化したんだろうなと、納得はできる。

違和感を覚えたのは、言葉だ。アレキサンダーの母に方言を含ませてみたとか、マケドニア人をイギリス・アクセントにしたとか、言葉に対する細かな工夫があったようだが、あの衣装、あの風景で、"英語は違うよな"と、単なる感触だが、そう思った。アメリカ映画だから、もちろんそんなことを言っても仕方ないのだが。

腐れ的には、アレキサンダーがヘファイスティオンを見つめる目だけで十分だろう。母とのシーンはつらいし、外では1人突っ走るアレキサンダーに置いていかれがちな観客がほっこりできる場面は、ヘファイスティオンとの場面だけだしね。描写不足との指摘もあるが、ここはほれ、『アレキサンダー』における"阿青&趙英エピソード"みたいなものだから……。

そうそう、そのコリン・ファレル、全裸シーンがカットされて激怒したという2004年米公開済みのインディーズ映画"A home at the end of the world"という作品がある。原作は角川文庫にもなっている『この世の果ての家』(『めぐり合う時間たち』の作者でもあるマイケル・カニンガム著)。自分、オールナイト明けで、またしても血迷ってAmazon.comでDVDを発注。いや、シシー・スペイセクも出ているんで期待したが、あとから評判を読むと、原作ほどの出来ではないらしい。うーん、バカだ。

もう1つ、コリン出演作でもうすぐ公開になる『ダブリン上等!』の方は、大丈夫だろうか? 作品評で『アモーレス・ペロス』が引き合いに出されている以上、見にいかねばならぬが(笑)。

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コメント

shitoさん、どうもどうも。

実は"Sin City"が今最も気になっている映画でして、キャスティングだけ聞いた時点で、中身も知らず「すげぇ」と唸っておりました。shitoさんが詳しく書いて下さっているのが嬉しくて、昨夜コメントをつけさせていただこうと出かけていったまま、しかし口を開けて寝てしまいまして……。失礼しました。あとでまた再挑戦してみます(笑)。

で、確かに、あのパルメニオンの処刑シーンは「ゴッドファーザー」を彷彿とさせるものがありますね。他のファミリーの人々が静かにどんどん「片付けられて」いく一連の場面など……。バビロンの明るい引きの映像が非現実的な出来事のようで上手いなあと感じます(でも、大王の仕事っぷりに突っ込みたくなる自分。もちろん、あれはあくまでも「心ここにあらず」を表した演技であるわけなんですが、どうしても……)。

で、映画の方は、本日無事見に行ってまいりました。ここ最近は、フィリッポス暗殺に直接手を下したパウサニアス(フィリッポスの恋人とどこかの相関図で見た気が……)に注目して見たりしております。きょうはロクサネの"愛"も見えました。単純ミーハー視点で言うと、クラテロス兄貴が好きです、かなり早い段階から(笑)。

やはりどこぞで見た「ブルズアイだったら、ガウガメラでダレイオスに向けた槍は外さなかっただろう」という誰かの意見も、けっこうお気に入りです。

そしてさらに好きなのは、フィリッポスとエウリディケの祝宴の場面です。じいさんから若者まで、みんなミニスカ&桂冠で、夢のようです。大王と親友はのっけから視線絡めてますしね。ああ、俺もあのロケ現場の片隅でセットの一部にでもなっていたかった、といつも思います。

話相手がいると妄言が止まらなくなりますが、こんなところでよろしければ、また遊びに来てやってください!

今晩わ、石公さん! 調子にのってまた参上してしまいした・・・。上野でのコリン大王最終上映は堪能なさったのでしょうか。
さて、ワタクシの拙いブログを御覧頂き、タイトルをお褒めにあずかり光栄でございます。ただしお断りしますと、デザインに関してはテンプレ使用なんですけどね^^;;

さて、コチラを拝読すればするほど頷き回数が増えている私であります。こと[Looking for A HOME to THE END OF THE WORLD]で述べられている良かったポイントには、ほぼ全面的に同意でございます。
しかしながら、パルメニオン殺害と大王の執務シーンが交錯するシークエンス、私はガッツリはまりながら観ていたので、突っ込む余裕は無かったです(笑)。それどころか、「おおっ、これはなんかちょっとゴッドファーザーチック!」なんて密かに喜んでいた次第。馬鹿過ぎです・・・ええ。
そんなわけで、私もまさかの大コリン祭りに突入しているのでありました。(これからリクルート再見して、ジャスティス観ます)

shitoさん、初めまして!

フォーマルにTB&コメント、きっちり頂きましてありがとうございます。shitoさんのblogも拝見してきました。いいタイトルですねぇ~。しかもロゴの位置取りも全体のデザインも素晴らしい。さらに、今、私が最も気になっている映画に言及されていて……あとで書き込ませていただこうと思っていますが、詳しく書かれているので嬉しかったです。ああ、公開が楽しみだ~。

で、大王です。shitoさんも「アレ」ルギー状態でいらっしゃいますか? コリン・ファレルはオリバー・ストーン版「アレキサンダー」では見事にはまっていたと思いますが、ただ1つ「これは似合ってねえよな~」と感じられる場面が、執務シーン。クレイトスとアンティゴノスがバビロンのパルメニオンを「処分」しに行くシーンを差し込みながら、大王が自室で書類をさばいていくあの場面です。アレキサンダーは、軍務だけでなく政務にも長けていたと言われますが、あのコリン大王では事務処理を賢くてきぱきこなすようには、どう贔屓目に見ても見えず……(笑)。書類に落とす視線が眠そうだよ、兄ちゃん、といつもあの場面で心密かに突っ込みを入れています。

ということで、明日は、たぶん最後の上映を某・上野に見にいくつもりでおります。きっと予告編の最中にあくせくと駆け込むのではないかと。仕事が長引いて行けなくなることのないよう祈るのみです。

はじめまして。今更ですが、石公さんの評を拝読しまして、なんというか、その後の経緯等も含めまして、非常に親近感を覚えてしまいまして、TBさしあげました。
私も大王映画以来、もしかしたらコリンにハマったかも…とか、ストーン監督見直しだ!とかで、傍から見るとなんだかな~な日々であります。
とはいえ、もとより気の多いタダのミーハーなので深くは突っ込んでおりませんが。
他の記事も大変興味深く拝読いたしました。私もアジア映画好きです。香港映画にハマってました(笑)。
またちょくちょく伺うこともあるかと思いますが、よろしくお願いします。

ロッコさん、はじめまして。コメント&トラックバックありがとうございます。

ロッコさんご本人の「アレキサンダー」評も、ロッコさんのところから飛べる他の方のものも、みな細かく書き込んでいらっしゃって、自分のは「作品」本体に対する感想ではないだけに恥ずかしいです。

いや「アレキサンダー」、ハマっている人はハマっているみたいですね。かくいう私も、映画館を出たあとはさほどでもなかったのに、じわじわ~と後から気になりだしました。「アエラ」のコリン・ファレル表紙を見るたびドッキリし、本屋で特集を探しまくり、検索キーワードに関連語句を入れている自分に気づいたりして……。既にDVDが待ち遠しいぞ(←もっと映画館で見ろよ)。

のちほどゆっくりロッコさんのところにも遊びにいかせていただきますね。

はじめまして!
数ある『アレキサンダー』レビューは批判的か、もしくは長かっただの、カタカナだらけでわかりずらいだの、
小学生のような内容が多い中、コチラのレビューはなかなか楽しませてもらいました(・∀・)!

私もこの映画に不評が多いのは、先入観のせいだと思いました。
きっとかっこいいヒーローが出る、娯楽映画を期待した人が多かったんでしょうね(´ヘ`;)
私個人的には、アレキサンダーの人間臭い部分を知ることが出来たし、良い映画だと思えたんですけどねェ。

そんなワケでTBさせていただきました♪

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