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2004.11.22

照る日曇る日

20日(土)より第5回東京フィルメックスが始まる。

土曜はUPLINK Xで『三人三色』を見てから、フィルメックスのオープニング『カナリア』を見たのち、『風を吹かせよう』を見るつもりだった。いや実際、見はしたのだ、一応。だが、どれもまともに頭から終わりまで見届けられずに終わった。バカだ……。ダメだ……。そんな日もある。

『三人三色』は韓国のポン・ジュノと、香港?のユー・リクウァイ(余力為)と、日本の石井聰亙の3人がそれぞれに撮った短編デジタル作品のオムニバスで、中でもポン・ジュノの作品だけはきちんと見たいと思っていたのだが、5分以上遅刻した上に、最初の上映がポン・ジュノ監督のものだということで、冒頭を見損ねてしまいがっかりしたまま3編を見終えた。内容はまさに三人三色の満足を与えてくれる。客が他に3組ぐらいしかいなかったのがもったいない映画だ。ポン・ジュノ監督の『インフルエンザ』については、監督自身のメッセージが公式サイトにも載せられているのでそのとおりなのだろうが、その前に「監視カメラの視点」だけで物語を描き出すというアイディアが本当に面白いと思う。監督の言うテーマにたどり着く以前に、「安心のファシズム-支配されたがる人びと」(斎藤貴男著)の監視カメラの話が思い起こされ、恐ろしくなる。ユー・リクウァイ監督の『夜迷宮』は『オール・トゥモローズ・パーティーズ』外伝とでも言うような作品。しかも『オール・トゥモローズ・パーティーズ』よりずっと楽しかったりする(短いからか?(笑))。

自分の遅刻のためにがっかりしつつ、フィルメックスの『カナリア』に向かう途中で、ふと、『カナリア』を全部見ていると、その後にチケットを取ってしまった『風を吹かせよう』の開映に間に合わないことに気付く。どちらを取るか迷うが、『カナリア』は公開されるだろうからそのときに全部見てもよし、取り合えず途中まで見て抜け出し『風を吹かせよう』に行くことに決める。『カナリア』は、オウム真理教事件を題材に、教団施設にいた信者の子供たちのその後を描いたものだ。日本人なら記憶に新しいし、「オウムの子供たち」と聞いただけで、彼らの背負う大きく重いものが理解でき、そりゃ引き込まれて見ていたが、中盤あたりまで、近くに座っていた外国の人たちは退屈そうにしていたようだった。肝心の後半に会場を抜けたので、あの映画がどうなったのか全くわからないのであとは何も言えない。

そして、これだけはきちんと頭から終わりまで見ようと決意していたパルト・セン・グプタ監督の『風を吹かせよう』(インド・フランス)。リアルに撮影されたエンタテイメントでないインド映画で、浮ついたところのないしっかりした作品で俳優も魅力的なのに、日頃の夜更かしがたたってかラスト直前に眠りに落ちてしまい、はっと気付いたところやってきたラストの印象的な涙と、主人公がそこにいる意味がわからず。

3本見たはずなのに、どれも、きちんと見たと言えるような有様ではない。

ただ1つ良かったことは、フィルメックスのレイト上映に昨年まで使用されてきたシネ・ラセット(←それなりに愛着のある映画館ではあったが)と違い、今年使用されているシネカノン有楽町が、ヴァージンシネマズ六本木ヒルズに匹敵する心地良い椅子と、見やすい館内設計&小ささを感じさせないスクリーンで、とても気持ち良く映画が見られる館であるということだ。

前日に引きかえ21日(日)は素晴らしかった。まずは、京橋のフィルムセンターで日本映画『飢餓海峡』を見る。1965年制作の3時間に及ぶ作品だか、名作・傑作の名のとおり、まったく飽きることなく最後まで持っていかれた。この見応えは、『殺人の追憶』に良く似ている(本当は逆だね)。運命の二重性、繰り返されるモチーフなどを考えると、この間見た『オールド・ボーイ』や『復讐者に憐れみを』を浮かべもする。重く、暗く、リアルに社会を描き、しかし見るものを引きつけて放さないエンタテイメント性をも合わせ持ち、この上なく魅力的な人間を演じる俳優がいる。今やそれが見られるのは、ほとんど韓国映画だったりするのだが。犬飼多吉(三國連太郎)、杉戸八重(左幸子)、弓坂刑事(伴淳三郎)というキャラクターの名前は、きっと忘れないと思う。

その後、シネカノンで『トロピカル・マラディ』を見る。わけのわからない映画だという評判も聞こえ、かな~り心配だったのだが、心配に反して大変満足に見終えた。もし寝不足で見ていたら、後半のジャングルのシーンの暗さに眠気を誘われたかもしれないが。物凄い緊張感と、物凄い色気と、物凄い湿度を持った映画だった。冒頭に引用されている『山月記』中の一節の筆者として表記される中島敦の名は「Ton Nakajima」。これは、海外では一般的な呼称なのか? あるいは日本でも文壇ではそう呼ばれていたりするのか? 後半、猛獣(虎)になってしまう若者の名がTongなので気になっただけだが。前半KengとTongが乗るトラックは三菱(ふそう?)だったのも気になった(←バカ)。やはり、『山月記』はキーかもしれない。全く偶然、この映画を見るのとほぼ同タイミングで読んだ2つの海外短編『密林の野獣』(ヘンリー・ジェイムズ)と『ゲイブリエル・アーネスト』(サキ)が、(どこをひっくりかえしてもそのような描写はないのだが)ホモセクシュアルという主題の隠された(と言われる)文字どおり「密林の獣」をモチーフとした小説で、何だか不思議だった。この映画、もう1回見たいぞ。

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