« 週末の興行成績 | トップページ | 悪魔のしるし »

2004.06.12

ひんやり温かな食卓

『花嫁はギャングスター』では出腹の夫(パク・サンミョン)を見にいったつもりが、親分である嫁(シン・ウンギョン)の格好良さにやられてしまい、出てきたら歩き方が微妙にソトマタ、幅なしの肩で風切り気味になっていた自分だが、今晩(といっても、きょうもまた日付が変わってしまった)見た『4人の食卓』は、外に出てからも身体の底に寒気が残っている感じがするぐらい、何だか染みた。

過去の辛い経験で心に傷を負っている人が、その傷の痛みや周囲の無理解(による孤独)と内面で戦う話なのだが、子供への虐待、育児放棄といった社会的で、根源的でもある問題が重要なファクターとなっている。

感じた「寒気」は、いわゆるホラー映画の怖さによる寒気ではない。(ホラーは苦手なので、他に余り見ておらずよくわからないが)この映画は、ホラー映画のセオリーからは、かなり外れた作り方がなされているように思える。効果音で脅し、映像で脅し、畳み掛けるようなテンポで恐怖を盛り上げていく多くのホラー作品とは全く違っている。そういうものを期待して出かけたなら、「中だるみ」と感じられるぐらいに。

が、集中できれば、そのゆったりした進行が、ある意味心地良い。音楽もいい。チョン・ジヒョンもパク・シニャンも、非常に好感の持てる、しかもホラー映画にはめずらしくさわやかさを感じさせる演技だと思う。台詞のトーンがいいのだろうか。自然な声だ。

恐怖を煽るということ以外でホラー映画が苦手な理由は、どう考えても割り切れないものを、好むと好まざるとにかかわらず「様式」として受け入れなくてはならないからだ。もちろん理屈はどうあれ、その様式美にひれ伏したくなるぐらいの魅力あるホラー映画ならそれもいいだろうが、そんな作品には今のところ出会っていない。

パンフレットによれば、主演のパク・シニャンはホラー映画には絶対出ないと言っていた。が、脚本を読んだとき「(前略)……怖さの理由が心理的にも論理的にも明確で、構成が綿密で完成度が高い」という理由で出演を決めたそうだ。その彼の言うとおりの映画だと思う。ホラー映画を見慣れない、「お約束」を知らない者にもついて行ける作品だ。

ラストシーンと、ラストの台詞は特に好きだ。わかったような解決を見せるより、静かで恐ろしく、いろいろな解釈が可能な結末は、文学的ですらあって印象深い。ひやっと恐ろしく、しかし愛しい食卓の風景。

人気(ひとけ)のない地下鉄を見ると、ニューヨークの龍子さんを思い出してしまうのは既に病理と言うべきか。

映画館では、もう『オールド・ボーイ』と『インファナル・アフェア 無間序曲』の予告編がかかっているんだね。『オールド・ボーイ』の予告編はわけがわからないが、チェ・ミンシクが回り灯籠のように出ずっぱりで様々な表情を見せてくれるのは嬉しい。逆に『インファナル……』は、1~3のこのシリーズで興味のあるのが大陸俳優2人のみという自分にとっては、予告編にその顔が見られなかったのは残念至極。


« 週末の興行成績 | トップページ | 悪魔のしるし »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/9120/754167

この記事へのトラックバック一覧です: ひんやり温かな食卓:

» 『SSU』@韓国映画34 [すとっく☆すとっく ~めざせサーファー主夫]
「SSU」/韓国/2003年/109分 日本語公式サイト  「SSU」 Amaz [続きを読む]

« 週末の興行成績 | トップページ | 悪魔のしるし »