« 香火が最優秀作品賞 | トップページ | まだ終わらない映画祭ロード »

2003.12.03

妖夜廻廊

12月13日に授賞式が行われる台湾金馬奨で、主演男優賞(呉彦祖)と助演女優賞(惠英紅)にノミネートされている『妖夜廻廊』。B級お耽美サイコホラーとしか思えないのだが、よくぞ選んでくれたなあ……と。

日本では、「ここしかねえだろう~!」東京国際ファンタスティック映画祭で10/31にオールナイト上映された。主演の呉彦祖(ダニエル・ウー)が来てくれたが、その美人さんには目もくれず、監督の李志超(ジュリアン・リー)も来たらいいなという淡い期待を胸に、監督の前作『心猿意馬』のVCDを鞄にしのばせて会場にいたのは自分ぐらいのものだったかも知れない……。

それは、たまたま2~3週間前に見たそのVCDの、”ベン兄貴”こと呉毅将と”へいちゃん”王喜のラブラブっぷりに、心を奪われたままの状態だったからだが……。

『心猿意馬』は3つのエピソードが微妙にからんだオムニバス構成で、やはりB級臭がただよっているわけで(三級片なんで仕方ないのだが)、でも呉毅将と王喜の場面だけはB級臭を吹き飛ばす勢いの、リアルさと熱さだった。

ジュリアン・リー監督はテレビ出身で、写真やアート作品や小説を手がける多才な人。映画は2本とも、彼の小説を映画化したもの。ホームページは、ジャンル別に細かく自作を紹介したこだわりのうかがえるサイトで、映画『ブエノスアイレス』の撮影に、夏永康(ウィン・シャ)と共にスチールカメラマンとして参加したこともそこでわかった。

残念ながら、ファンタでジュリアンにまみえることはなかったが、作品は、美人(ダニエル・ウー)を得てはしゃぎまくったかの如き監督ワールドが思う存分展開されていた。

アーティストである主人公の「作品」は、実際のジュリアン自身のサイトで見た自作アートだったし、設定は同志小説そのものだし、最も美しい演出は美人(!)の自慰シーンだし、裸でまどろむオープニングも、モチーフの絵画も、おサルも、監督自身が顔を出すあたりも、隅から隅まで彼の趣味で満たされている。

肝心の内容は、観客の頭の中にクエスチョンマークがぽっかり浮かぶ素敵(!)な仕上がりで、ティーチインでも、主演俳優自身が「結論は見た人なりの解釈でいい」という意味の答えをしており(というか、そう答えるしかないよな……)、期待通りの脱力をもたらしてくれた。さ~す~が、ジュリアン。

見どころは、図書館のじいさん(物語のキーマンである)のキュートな持ち味と、主人公が元クラスメートにすがりつくシーンといったところか。

« 香火が最優秀作品賞 | トップページ | まだ終わらない映画祭ロード »

コメント

亮香さん、おはようございます!

このところメキシコやらギリシャやらに心奪われ、アジアに戻ってこられない状態が続いている私ですが、三級片「心猿意馬」&親愛なるB級ディレクター李志超は既に殿堂入りの"My Favorite"ですから、大歓迎。いくらでも語ってやってください。いやもう、疲れたときには「心猿意馬」です。

一方「妖夜廻廊」の方はダークで耽美な世界です。図書館や香港の市街など舞台良し、登場人物の雰囲気も胡散臭くて良し……なのに、「心猿意馬」以上にグレートな不出来映画。出演俳優のファンと寛大で酔狂な方(←俺だ)にしかお勧めできません。ご購入のご決断は慎重に(笑)。

もちろん「情熱の某」も好きな映画なのですが、初めて映画祭で見たときの私の感慨は、感動よりはむしろ「え~、なんで死ぬんだよ」というものでした。監督はこのストーリー(の結末)に納得していたのか尋ねてみたいと思ったものですが、そのとき舞台に登場したのは、原作に惚れぬいていたプロデューサーでした。

(「情熱の某」)原作は、キャラクターにこそ魅力はあるものの、いわば偶像電視劇と同様の「物語進行のための筋立て」といった感があり、映画化作品が「作品」と呼ばれるレベルに達したのは、ひとえに監督の力(&プロデューサーの執念)だと思っています。

そしてニエズは、テレビドラマといえども、(権威的な物言いに聞こえてしまいますが)B級映画や偶像劇&三文小説とは一線を画する原作を下敷きにしたものですので、その示唆するものは多く見るものに複雑で重層的な感動をもたらしてくれていると思います。

原作では、ラストシーンで李青と少年が走るあの道は「忠孝路」(台北の忠孝西路)と表記されているそうですが、その原作を邦訳されている陳正醍氏は「白先勇『[薛/子]子』覚書」という論文の中で、その場面(ドラマもほぼ同じです)について、冒頭で畜生(←父に「恥知らず」と蹴り出されるときの台詞です)と罵られた主人公が、ラストで(人倫上の用語である)忠孝と名のついた道を進んでいくラストは、社会において人倫から外れた「畜生」と罵られる少年たちが、実際には「人」としての道を追及していることを語りかけている……ということを書かれています。論文にはさらに「国家」や「民族」という視点も登場するのですが、いずれにせよ、意志的で含むものの多い、素晴らしい結末と言えるでしょう。

いいかげん今年あたりは、原作の日本語訳が出版されるんじゃないかな~と(単なる盲信ですが)思っているので、今年はニエズというドラマについても、もう少し細かく書いてみたいと思っています、いるのですが……(誘惑が多くて)。

でも、B級モノの、頭を疲れさせずに楽しめる魅力も捨てがたいですねえ。いや、自分のキャパシティに挑戦、といった気分もありましてね(笑)。自分にとって、どのあたりまでのB級度なら許容できるのか、楽しめるのか、という。やはり酔狂か。

亮香です。(最新の記事にコメントせずに過去記事にばかりお邪魔してます。天邪鬼ですみません。)
「妖夜廻廊」は未見なのですが、こちらの「ニエズ」のサイトに辿り着いた経緯が同監督の「心猿意馬」でした。実は先のコメントでお尋ねした(返答有難うございました)「[薛/子]子-幕後花絮」と一緒に‘やっと’注文したのが「心猿~」でして。3っのエピソード中、石公さんご指摘の“ベン兄貴”こと呉毅将と”へいちゃん”王喜のラブラブっぷり”のパートのみストレート!なfall in loveに描かれてありましたよね。監督のセクシュアリティーは存じませんがこのゲイカップルに珍しくハッピーエンドの予見を含ませてのラストがいいです。ラストといえば「ニエズ」の結末も意外(嬉しい)でした。悲劇(よくある)でなく、all happy(リベラルアメリカン)にもならず、さらに傳老爺の訪問から親子の絆を謳うかと思いきや、新公園に戻る選択をした阿青の描き方に驚きと共感を覚えました。ついでといいますか、S・クワン監督の「情熱の某」(こうお呼びですよね)の結末を変えるか否かの議論がなされたというのも過去に描かれ続けた、ゲイ=最後は死ぬ、の定番に抵抗があったのでしょう。「心猿意馬」“the Accident”、B級映画結構、香港俳優のプロ芸(ゲイ!)に脱帽です。
p.s.「妖夜廻廊」もソフト見つけ次第購入しそうです(笑)。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/9120/243634

この記事へのトラックバック一覧です: 妖夜廻廊:

« 香火が最優秀作品賞 | トップページ | まだ終わらない映画祭ロード »